千住文子 千住真理子 『母と娘の協奏曲』

  よくよく考えてみると、私が一番生で沢山聴いているソロの
ヴァイオリニストは千住真理子であった。彼女は頻繁に新潟で
リサイタルを開いてくれる。またテレビでも彼女の演奏はよく耳
にした。賞賛の一方でさまざまな厳しい批評があることも承知
しているが、私はやはり彼女のひたすらなヴァイオリンの音色
が好きである。音楽の演奏には下手とか上手いという言葉で切
り分けられないものがあることを信じる。
 この母子の本を他にも読んできたが、この本を読むと本当に
生きるということの苦しさと切なさを感じる。この家族の関係は
一筋縄でも美談でも語れない。壮絶だと思う。
 一見華やかで、日の当たる芸術家一家の物語のようだが、
そうではない。ぎりぎりの闘いが見え隠れする。兄妹3人と母の
結束は強いけれども、外部から、強い逆風が吹きまくっている。
 
 それでも立ちがあがり、現状に満足せず、100%の人生を
ヴァイオリンに賭けるという。
 結婚、離婚も経て、今だからこそ、「もうそういうことはいいや」
という段階になり、すべてをかけて打ち込める。それは強さだ。
 なかなかそういう境地にはなれない。
 日々の日常に追われ、俗っぽい欲望とおろかな失敗の繰り返し。
あらゆることに手足をつっこんで、ひたすらに打ち込めるものが
なんだかわからなくなっている。
 一つ、千住真理子がうらやましいと思えるのは、血のつながった
家族の愛を迷いなく、受け取りそれにひたって生きていることだ。
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by nokogirisou | 2011-01-29 09:54 | 本と図書館
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