『くまっていいにおい』ゆもとかずみ文ほりかわりまこ絵

 
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徳間書店から出されている児童書なのだが、大人のための
本ではないかと、Kさんから紹介された。
 森のおくに、はちみつ入りのコーヒーを飲んだり、レコードを
聞いたりして静かにくらしている「くま」がいる。
 その「くま」のところに、森のいろいろな動物たちが哀しみや苦
しみを持って「くま」のところに訪ねてくる。「くま」の毛に顔を埋めて
悩みを語り、泣いて「くまっていいにおい」と言って帰っていく。
 ところが、毎日毎日動物たちになやみを聞いているうちに「くま」は
疲れてしまった。「こんなにおい、なくなっちゃえばいいんだ」と思う。
 そこに登場するのが「きつね」。みんなが慕う「くま」に嫉妬して
「くま」のいいにおいを消す薬を発明する。
 「くま」はその薬をのみ「くまのにおいありません」と木の札をぶら
さげて動物たちの話を聞かなくなる。思う存分本を読んでレコード
を聞いて自分の時間をすごす。
 しかしやがて、誰とも会わないうちに「くま」はすっかり元気を失い
病気になってしまう。この弱った「くま」を助けてくれたのはなんと
「くま」に嫉妬していた「きつね」だった。「くま」と「きつね」は後悔しあい
不思議な友情に結ばる。
 やがて、ふたたびくまのところに動物たちが訪ねてくるようになる。
消えたはずの「くま」のにおいも戻ってくる。

 この物語の中で、子どもの本らしくない不思議なところは、「くま」
と「きつね」の友情と「くま」が回復していく過程だ。
 くまはまた、前と同じようにみんなが悩みを持って頼ってきたときに
今度は叫ぶことができる。
「みんないいかげんにしてよ」
「ちょっとひどいよ。ぼくはまだ病気なんだよ!」

 これは以前の「くま」が言えなかった言葉だ。
いい人(くま?)であろうとして、疲れてしまった「くま」。

 人の悩みを聞いて、人のために尽くして、疲れてしまう人間は多い。
 どうやって回復していくか。どうやって自然体で生きていけるか。
 どうすれば他者と疲れることなく関わっていけるのか。
 
 擬人化されているが、とても人間っぽいお話である。
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by nokogirisou | 2011-02-19 20:05 | 本と図書館
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