『レインツリーの国』有川浩

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  一気に読んだ。
 ネットで始まり、メールで闘う恋愛小説である。
 『フェアリーゲーム』というライトノベルのシリーズの感想をメール
で交換しあううちに、つながり合う伸とひとみの姿がリアルに描かれる。
メール交換を重ねるうちに、二人は自然と惹かれ合う。
しかも、彼女の方は中途失聴者であった。
 ここまでならよくあるお話である。障碍を持つ彼女と出会い、本物の
恋人になっていく物語だ。
 私がもっとも気になり興味深く思ったところは、互いにわかりあえない
ところをどう、受けとめていくかという部分だ。きれいごとで済まさないと
ころが興味深かった。
 たとえば、伸は、うまく進まない恋を会社の同僚のミサコに相談する。
すると彼女は身障者のことをこう言ってのける。
「何かねー。わざと空気読まない人多い感じがする。普通なら流すとこ
ろ、わざわざ突っかかってわざとけんかになるようなことをするよ。
(中略)でもね、それって試しているんだって。そんなイヤミな言い方
してもその人が自分のこと嫌いにならないかどうか。」
私は、はらはらしてしまった。こんなこと本で書いていいのだろうかと。
しかし、実生活でこのような体験を私もしたことがあった。言葉尻をとら
えられて、人権意識の低さを指摘されて傷ついたことがある。けれども
それをきっかけにコミュニケーションが進み、互いに近づけたという経験
を持つ。だから、妙にこのミサコの発言に説得力を感じた。
 
 こうして、二人はとりあえず目の前の壁を乗り越えて、恋人になって
いきそうなところで物語は終わる。

 有川が聴覚障害者のことをとてもよく勉強したことも、男女の心の機微
をうまく書ける作家であることもよくわかった。

 おもしろかったが、何か物足りない、何か不満だとしたら、語り手の視点
があいまいなところだろうか。伸の立場から書いているところもあればひとみ
の視点で書かれているところ。そして神の視点で書かれているところが微妙に
混じっているところが気になった。そして、やや人間像がステレオタイプのところ
が気になる。(えらそうなこと書いてすみません)
 周辺の人物が描かれたりするともっと厚みが出てくるのだろうか。
 しかし有川の挑戦のようなこの小説に好感を持つことができた。
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by nokogirisou | 2011-04-30 09:44 | 本と図書館
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