江國香織『ウエハースの椅子』

 仕事がら、小説を読む機会が増えたのはうれしい。
 今日は、読書家の少女に勧められて一冊を読む。
 少女時代の回想を交えながら、自分の静かな恋人との
時間を失うことを恐れる38歳の画家の語りだ。
 たんたんと描かれているのだが、彼女の生活がつぶさ
にイメージできる。結婚はできないが完璧な恋人との時間
をよくばらず、大切にしてきた。ところが、だんだん待ってい
るだけの自分、恋人のいない時間をたえられなくなっている
自分に気づく。
 彼女は、別れるしかないと思うのだが、病を得て、やはり
別れられない。かなわないであろう夢を二人で語り続ける。
 今は幸せ、今は楽しいが将来に対するぼんやりとした不安
と相手には家族と恋人という二重の生活があるという不満。
傷つかないように用心深くしていたにもかかわらず、しだいに
傷ついていく感じがリアルだ。
 これを17歳の少女が私に勧めてくれたことをとても不思議
な感触を持ってうけとめる。
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by nokogirisou | 2011-06-10 06:16 | 本と図書館
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