『手紙屋』喜多川泰  ディスカバー21

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 これは自己啓発本の一種なのだろう。
「僕の就職活動を支えた10通の手紙」という副題が
ある。
 やや抽象的な職業論、仕事論、人生論的な部分も
あるが、それでもこの本を最後まで読んでしまうのは
いくつかの仕掛けのせいだ。
 私は、主人公諒太が、手紙屋を知ることになる「書楽」
という喫茶店や、「手紙屋」の存在に魅力を感じる。
「書楽」は顧客の誕生日に、特別な玉座のある書斎を
利用するサービスをプレゼントしてくれる。本も手紙も
喫茶店も現代社会では、斜陽なものたちだ。だからこそ
とてもいとおしく、リアリティを感じる。
 こんな喫茶店が現実にあったらどんなにステキだろう。
諒太は、その書斎で「手紙屋」と出会い、10通の手紙を
交換し始める。諒太はちょうど就職活動を開始したばかり
の大学4年生だ。
 手紙屋と文通しならが、諒太は仕事をするとはどういう
ことか、ビジネスとは何かを学んでいくのだが、そういう
ところは、やや予定調和的で、私はあまりおもしろくなかった。
こんな説教臭い手紙をありがたがって読む諒太がとても
レトロな青年に思えた。
 手紙を中心にすすめれらる小説なので、諒太の大学生活
や就職活動の描写がほとんどなく、説明的な文章が多いの
が残念だが、わかりやすい小説でもある。しかも手紙屋が何
者か、やはりそれが気になって先へ先へと読んでしまう。

 なるほど。こういう小説もあるのだなあ。けっこう若い人たち
に好評らしい。
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by nokogirisou | 2011-06-13 19:29 | 本と図書館
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