『困ってるひと』 大野更紗著 ポプラ社

 
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 すでに話題になっている本だが、私も書評を読んで、この本に吸い
寄せられた。
手にとって一気に読む。26歳の大学院生の運命と表現力に圧倒させら
れてしまった。福島から上智大学のフランス語科に行き、そこでビルマ
(ミャンマー)の難民問題に出会って、軍事政権と闘い、難民を救うた
めに多忙、過激な日々を送った著者が、どういう具合か自己免疫疾患の
難病にかかって医療難民となる。(ビルマの難民問題にこんな風に関わ
っている人たちがいるということを知ったこともかなりショックだった
のだが)病気というのはまったく理不尽なものである。有能で活動的な
若い女子が病気になる。彼女の生活と夢はすべてストップする。その状
況での困ったぶりが、本当になまなましく、他人事でなくリアルに描
かれる。しかしその目が客観的なので、読者はある意味救われる。見方
が分析的で、書き方がうまくて読ませる。彼女個人に対する同情や哀れ
みでなく、社会問題として「こまった状況」(いつか自分のなりうる困
った状況)をどう打開していったらよいのか真剣に考えさせられる。困
ってる人は彼女だけではないのだ。
この本を読んで痛いなと思ったのは、信頼関係にあったクマ先生との
間に溝ができたところと、これまで懸命に支えてくれた友達が、支える
ことが負担になっていると告げにくるところだ。人はとことん甘えること、
赦されることはないのだろうかと思ってしまう。
 健康でゆとりのあるときは、気遣いも気配りも自立もできる。けれども
本当に困ってしまって人に頼るしかない、わがまま言うしかないときに、
そんな余裕はない。相手から切られてしまうときのショックはいかばかり
かと思う。
他人に全面的に頼られるときの重さもわかる。自分自身が疲れてしまう
のもわかる。でもそこで最後のぎりぎりのところで、人を切りたくない。
そこまで自分を追い詰めたくないものだと思う。
 救いとなったのは、最後の方の淡い恋愛談。難病の彼の誠心誠意のふる
まいにほっとする。やはり愛が必要なんだ。人が生きていくには。
 著者がこれから病気とうまくつきあいながら、絶望せずに、発言を続け
ていくことを祈っている。
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by nokogirisou | 2011-09-08 21:26 | 本と図書館
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