いわさきちひろ「ラブレター」

 本屋さんが、『ラブレター』を仕事場の机においていってくれた。
 いわさきちひろの数多い絵の中で私が一番印象に残っているのは
『赤い蝋燭と人魚』の絵である。それもとっても暗くてさびしい日本海
の絵である。直江津の浜で、海をスケッチしながら(すでに病は進ん
でいた)具合が悪くなり、近くの人の家で休ませてもらいながら、
あの、絵を仕上げたという。
 彼女の残した多くの言葉の中で私が印象に残っているものの中に
次の一節がある。
 「若かったころ、たのしく遊んでいながら、ふと空しさが風のように心
をよぎっていくことがありました。親からちゃんと愛されているのに、親
たちの小さな欠点が見えてゆるせなかったこともありました。
 いま私はちょうど逆の立場になって、私の若いときによく似た欠点だ
らけの息子を愛し、めんどうな夫がたいせつで、半身不随の病気の母
にできるだけのことをしたいのです。
 これはきっと私が自分の力でこの世をわたっていく大人になったせい
だと思うのです。大人というものはどんなに苦労が多くても、自分のほう
から人を愛していける人間になることなんだと思います。」
              「大人になること」より
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by nokogirisou | 2004-11-27 16:06 | 本と図書館
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