『ユウキ 』岸川悦子

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 ユウキは「元気な重病人」だったという。
この本は、ユウキの死後にユウキのことを知った
岸川悦子という児童文学者がノンフィクションと
して書き下ろした作品なので、普通の闘病記の
ような悲惨さはない。
 高校卒業後、ワーキングホリデイビザでオースト
ラリアを旅し、パースで滞在したCITY&SURFと
いう安宿で多くの若い日本人旅人たちと友人になる。
ここで出会った友たちが、のちにユウキを支えること
になる。
 食欲旺盛で好奇心旺盛なユウキが体の異変を感じた
のは旅の最中だった。最初は歯のぐらぐらと顔の形
が変わったことだった。それが後に世界でこれまで
7例しかない奇病「大量骨溶解」であることがわかる。
 ここからの闘病は、とにかく迫力がある。
 ユウキとジュンジをはじめとする旅で出会った仲間
たちとの絆、ユウキと愛犬ボンとの絆。そして
中学校時代の恩師やお世話になった幼稚園の園長先生
との絆。そしてユウキの家の近くの大谷観音堂の堂守
の小林和尚との出会い。これらがモザイクのように
ユウキの激しい闘病生活を彩る。
 弱音を吐かない限時なユウキも夜中に看護師に手を
握られながら涙を流していたことがあるという。こう
いうエピソードにリアリティを感じる。
 病に陥ったときに、何を支えてに死まで生きたらよい
のか。また自分にとって大切な人が死に向かって生きて
いるときに、自分は何をしたらいいのか。そういうこと
をしみじみ考えてしまった。私自身は、もう好きなこと
をずいぶんして生きてきたからある程度覚悟はできる。
じたばたするだろうが、最後は静かに、心穏やかに死ん
でいければいい。しかし若い人の死や闘病は本当にたま
らない。やりたいことがたくさんあるだろうに。なんと
も励ましようがない。
 生きる、生き続けるということはきれい事では終わら
ない。
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by nokogirisou | 2011-10-02 19:37 | 本と図書館
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