『七夜物語』上下 川上弘美 

 
 
a0023152_2230337.jpg

 ずっと気になりながら読めなかった川上弘美の『七夜物語』
上下巻を読了した。不思議な物語だった。何が不思議って、
語りが不思議なのだ。二人の子どもに寄り添いながら、時々
解説もしてくれる、確かなまなざしの3人称の語り。いったい
これを語っているのは誰なのか。
 そして、昭和50年代の日本の生活がなんと懐かしいことか。
 私にはこの空気がわかる。携帯電話もコンビニエンスストア
もない、口笛や図書館や台所がとても大切だった時代。
 七つの夜の冒険の描写がやや冗長に感じるところもあったが、
実はどの描写も大切で、省くことが出来ない部分なのだと後に
なって感じる。
 小学4年生の鳴海さよと仄田鷹彦。ふたりはそれぞれちょっと
面倒な境遇を抱えている。その選ばれた二人が、『七夜物語』と
いう不思議な本と出会って、その物語と同じ世界にに入りこんで
しまう。けれども、読んだ本の内容は、すぐに忘れてしまうのだ。
本の世界に入りこむところなどエンデの『はてしない物語』を思
い出したりするのだが、ドイツとは異なるこの時代の日本独特の
生活と世界がここには広がっている。
 さよと仄田くんのゆっくり、たしかに成長していく様子を追い
かけたくて、私はページをめくる。さよのお母さんとお父さんが
またとても不思議な人たちで、魅力的で、ページをめくる。さよ
のお母さんは、とても変わった女性なのだがなかなかリアルで存
在感がある。
 何事もなかったように時間は流れて物語は終わる。しかし何事
かが、確実に起きていたのだ。
[PR]
by nokogirisou | 2013-02-08 22:31 | 本と図書館
<< 新潟大学教育学部音楽科卒業演奏会 牛田智大ピアノリサイタルin新潟 >>