『仏果を得ず』三浦しをん 双葉文庫

 
 三浦しをんは、とまらない。いつも一気に読ませて
くれる。
「金色に輝く仏果などいるものか。成仏なんか絶対に
しない。生きて生きて生きて生き抜く。」

 高校の修学旅行で人形浄瑠璃・文楽を観劇した健は、
義太夫のエネルギーに圧倒され、卒業後は文楽の研修所
に進む。そして、芸に精進し、笹本銀太夫の弟子として
働き、恋をし、矛盾と混乱の中にあって、いよいよ文楽
と出会って14年目になろうというときにこの境地に至る。
 
 とにかく文楽をめぐる群像の描き方がうまい。太夫の
面々も三味線の面々も、そして銀太夫の妻の福子も、遊
び相手のアケミや、健の恋人の真智まで、ひとりひとり
生きている。

 軸になっているのは、健と銀太夫の師弟関係と義太夫
健と相三味線、兎一郎との関係だ。特に健と兎一郎の
関係が、しだいによくなり、互いの芸が刺激になって
いく過程は引きつけられる。なぞの多い兎一郎だが、
だんだん、彼の人となりと魅力が見えてくる。

 芸に生きるものは、芸に命をかける。寝ても覚めても。
恋にうつつを抜かしていると、すぐに芸に出てしまう。
恋愛は芸の足しともいう。けれども健のあたまの中は
好きな真智さんのことでいっぱいになると、師匠にも
兎一郎にも見破られ、怒鳴られてしまう。

健の友人誠二は健にこうアドバイスする。
「恋愛で駄目にならん秘訣を知っとるか」
「相手になにかしたろと思はんことや」

 文楽が観たい。大阪に行きたい。
そんな思いでいっぱいになる。
 
 
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by nokogirisou | 2013-02-11 23:21 | 本と図書館
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