『ダンス・ダンス・ダンス』村上春樹

 
a0023152_512771.jpg
 
 何故だろう。涙が出た。何の涙なのだろう。
 私はこの作品が好きだった。それだけをおぼえていた。村上作品の
中でも特に好きなものの一つであった。でも何にもおぼえていなかったのだ。
ドルフィンホテル、アメ、ユキ、五反田君のことはおぼえていてもこの物語の
ことをおぼえていなかった。今読まなければならなかったのだ。
 再読なのにどうしてこんなに新鮮なのだ?私は以前にこの本を本当に読ん
だのだろうか?
 「何かがやってくるのを待てばいいのだ。いつもそうだった。手詰まりになった
ときには、慌てて動く必要はない。じっと待っていれば、何かが起こる。何かが
やってくる。じっと目をこらして、薄明の中で何かが動き始めるのを待っていれば
いいのだ。僕は経験からそれを学んだ。それはいつか必ず動くのだ。もしそれが
必要なものであるなら、それは必ず動く。 文庫下巻p187」
 「欠落感」「喪失感」
  これはは自分自身のものでもある。
  けれどこの小説には、めずらしく出口がある。これはすごいことだ。



何か救われた気持ちになって最後のページをとじることができる。
ひたすら読んでいた。読んでいる途中で、どうしても人に会いたくなった。
どうにもこうにも硬直していて、孤独で、一人で読み切ることができるだろうか
不安になった。でも結局一人のままで最後のページにたどりついた。
 全ては繋がっている。
 僕がとても正直な人であることが私をとてもリラックスさせてくれた。
 僕と五反田君と関係。2人の会話は哀しいがすごくよい。中学時代で理科の実験
班が同じだっただけの2人。ある映画を結び目として再会。欠落感を持つ男同士
がユーモアのセンスを保ちながらどうしてこんあんい本質的なことを語りあえるのか。
 「『僕はただ、きちんとステップを守っているだけなんだ。ただ踊っているだけだ。
  意味なんかないんだ。』
 『何処に意味なんてある?我々の生きていることの意味がどこにある?』下巻p300)
 
 僕とユキの関係。この信頼関係も非現実的なものかもしれないが、私には好ましい
関係。安定した愛がある。ひょっしたらそれはニュートラルなものかもしれない。
「どうしてだろう?どうして僕は君というのが好きなんだろう?歳もこんなに違うし、共通
する話題だってろくにないのに?それはたぶん君が僕に何かを思い出させるからだろう
な。僕の名かにずっと埋もれていた感情を思い起こさせるんだ。 下巻p206」

 そして僕とユミヨシさんとの関係。とても現実的な関係。
「『ねえ、こんなに激しく求められたのって初めて』とユミヨシさんは言った。『そういうのって
ちゃんと感じるの。自分が求められているって。そういうことを感じたのは初めて』下巻p343」
  
a0023152_5122832.jpg
                   
[PR]
by nokogirisou | 2005-08-18 05:09 | 本と図書館
<< 裏磐梯の思い出 アンモナイトをさがしにいこう >>