『優しい音楽』 瀬尾まいこ

 
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  リアリティがないようであるようで、どろどろするはずの問題をさらさらと
 描く。 
 表題作の『優しい音楽』は、しかし、彼女なりの工夫がある。
 短篇なのに千波の側からとタケルの側から交互にかき分けている。
 「セックス」という言葉を「水をのむ」くらいに軽くつかっている。
 もちろん性描写はなし。ことばだけなところが瀬尾らしい。
 そして料理や食べ物の描写が音楽以上に重要な役割を果たす。




 亡くなった息子と瓜二つの娘の恋人を、息子の生まれ変わりと素直に
 受け入れてしまう両親…「優しい音楽」
 とか
 不倫相手の子どもをひきとる恋人…「タイムラグ」
 とか 
 ホームレスのおじさんを「拾って」くる…「がらくた効果」
 とか
 現実にはありえないことを、さらりと描く手腕は瀬尾らしい。

 『卵の緒』以来、この作家の作品は全部読んできた。けれども購入したのは
一冊もない。すべて単行本を図書館で借りて読んでいる。
 読まずにいられない「何か」が瀬尾の小説にあるし、ちょっと優しい気分に
なれるのは確か。けれども、単行本を買って手元において繰り返し何度も読
むかと言われるとちょっと迷ってしまう。
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by nokogirisou | 2005-09-13 04:32 | 本と図書館
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