『こころの処方箋』河合隼雄著 新潮文庫

 
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 河合隼雄は、やはりさすがだと思うことがある。
 ものの見方が徹底して一面的でないところだ。
 この本にはいくつもの知恵がつまっている。心のどこかで
わかっていることを顕在化、意識化してくれる作用がある。

  「二つあることさてないことよ」
「悪いことは、何かよいことのバランスのために存在している」
というのは真実だと思う。それを見抜けなくて、あるいはわかっ
ているくせに愚痴を言ったり、文句を言ったりしてしまうことの
愚かさを私は痛感する。
 とにかく欲張りになってはいけないのだ。
 しかし、たった一つの切なる希望がかなえられないと、すべて
が悪いように感じてしまうことがある。たった一つの確信が得ら
れないために、すべてが不安に感じてしまうことがある。




 「イライラは見通しのなさを示す」
自分ではイライラを自覚していなくても、他人から指摘される
ことがある。見抜かれてしまうとは…。しかしそうやって自覚
することで、その原因を考えようとして、見通しが見えてくると
イライラは収まってしまったりする。
  「100点以外がダメなときがある」
とにかく努力が報われないとか、損ばかりしていると嘆くのは
どうも努力の要領が悪いようだ。100点分の努力をしなくては
ならないときと60点くらいの努力でいいときがあるのに、いつも
80点の努力ではだめなのだという。
 「説教の効果はその長さと反比例する」
これは身をもって実感。
 「自立は依存によって裏つけられている」
「人生のなかには、一見対立しているように見えて、実はお互い
に共存し、裏付けとなるようなものが、あんがい多いのではないか」
に共感。

 「神は細部に宿り給う」はワールブルクの言葉だそうだ。
 この言葉、むかしある人に教えてもらった。今はとてもぴんとくる。
 
 「うそは常備薬 真実は劇薬」
 「他人を非難するとき、うそが混じっている間はまだ安全である。
 その人の真実の欠点を指摘するとき、それは致命傷になる。」
 これはまったくその通りだと思う。これで痛い目にあったことがある。

 「どっぷりつかったものが本当に離れられる」
 本当に離れるためには、一度どっぷりとつかることが必要なのだという。
 これはがつんときた。中途半端なことをするとたしかに「心残り」がする。
 
 どの頁をめくっても、おおと思わせる。しかもとても落ち着いた文章で
ある。やはりさすがと思ってしまう。
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by nokogirisou | 2005-10-24 21:33 | 本と図書館
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