『盤上の海、詩の宇宙』河出書房新社

 お借りした本だが、これは手元に置きたい本になった。
読み始めたら一気に読んだ。対話というものがこんなに
おもしろいものかと。村上春樹と河合隼雄との対話とは
また違う趣だ。とても丁寧にことばをやりとりしていることを
感じる。この本を貸してくれた人は、私がひそかに羽生氏
に興味があることを知っていらのだろうか。おそらく偶然だ
ろう。
  
a0023152_931941.jpg




 将棋に関してはまったく素人なのだが、羽生さんには興味と関心を
いだいてきた。吉増氏の詩はときどき読んできた。長いなと思いながら。
それぞればらばらに出会ってきたのだが、思いがけないところでつなが
った。
 とにかく吉増氏の、聞き方のうまさに脱帽である。

 この対談集に流れるメインテーマは「時間」ではないかと思う。
羽生さんの中の灰色の時間と白い時間。その接点をつかむとき
が調子のよいときだという。
そして考えているときが楽しくて楽しくて仕方がない時間というの
は1%で99%は苛立ちを覚えているという。(これは、わかる気が
する。どんな仕事においてもそうなのかもしれない)
 長考で煮詰まったときは、いままで考えてきたことを白紙に戻し
て空白の時間をつくるそうだ。いままで考えてきた指し手には
とても愛着があるだろう。しかしその指し手を考えていく中で捨て
なくてはいけないのだ。

 なにごとかを為すにはやはり「待つ」ことが大事なのだと思う。
 「そのときを待つ」
 「心がしずかになるときを待つ」

 将棋を指すことも、詩を作ることも、漠然とした不安を抱えながら
 「なにか一所懸命小さな喜びを感じながら」生き延びることなのだ
 ということを知り感動する。

 最後の「言葉の道ー羽生さんに捧げる詩篇」は、私が羽生さんで
 ないのに、とても照れくさい。でもうれしい。
[PR]
by nokogirisou | 2005-11-06 09:29 | 本と図書館
<< バナナフィッシュにうってつけの日 今年最後?の満天の星空 >>