なぞのスウェーデン 『福祉国家の闘い』

  子どもの頃にアストリッド・リンドグレーンの児童文学で
私は、スウェーデンという国を知り、勝手に憧れてきた。
スウェーデンだけでなく、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、
北欧の国には、何か特別に私を引きつけるものがあり、いつか
訪れたいという願望を持っていたが、スウェーデンについては特
に興味を持ち続けてきた。勝手に森と湖の自然の国のイメージ
が強かったのだ。

 けれどもこの国について私はほとんどよく知らない。福祉国家
のモデルとして、あるいは、フリーセックスの国として、紹介される
ことは知っていたが、実態はまるでよくわからなかった。

 この本『福祉国家の闘い』(武田龍夫著)は、私の懐いていた疑問
によく応えてくれた。スウェーデンに対して私たちは多くの誤解をして
いたかもしれない。
 




 最も興味深かったのは、スウェーデン人の気質であった。もちろん
これは個人差のあることなのだろうが、やはり傾向があるのは否めない。
彼らは強烈な個人主義である。それも現実主義と合理主義を持つ利己
主義ともつながるそうだ。そして、礼儀正しく、人間関係はクールだという。
決して社交的ではない。
ここに関心を持った。内向的で孤独を愛する。他者に対しては無関心で
ある。そういうスウェーデン人が何より関心を寄せるのは自然だという。
そして自由よりも平等を求める。
 スウェーデンが福祉国家となったのもこういう気質によるところが多い。
個人主義を追及すると、国家が失業、医療、老齢の保障をする必要が生
まれるのである。もちろん、そのために国民は多大な負担を強いられている。
税金の高さには驚かされる。国民はそれもやむを得ないと受け止めている。
 高度な福祉社会維持には当然のことながら経済力が必要なのだがその
経済力が衰えた今、スウェーデンはやはり苦しい局面にたっている。スウェー
デンを美化するだけでは実態は見えてこない。 
 また、スウェーデンの福祉制度や規則や施設は合理的だが、人間的交流
はどとんどないという。情緒的なもの、人間的交流を求める日本人とは福祉
の概念が違うようだ。
 それから、ノーベル賞の光と影、またノーベルという人の生涯について知る
ことができたのも収穫だった。
 この本で知ったこともスウェーデンの一部なのかもしれない。とにかく人も
国も多面体である。それを改めて気付かせてくれたこの本は大変面白かった。
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by nokogirisou | 2005-12-01 23:28 | 本と図書館
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