南條範夫 「燈台鬼」

 以前小説「月ぞ悪魔」について書いたが、その小説を紹介してくれた
方から今度は「燈台鬼」を紹介してもらった。自分だけでは出会えない
小説に出会えるので、紹介していただくのはありがたい。
 南條範夫は2004年の11月に96歳で亡くなった作家だ。東大卒の
経済学者で、「燈台鬼」で直木賞をとり、「元禄太平記」の作者として知
られている。
 正直に言うと、私は歴史小説があまり得意ではない。平安時代もの
以外は、あまり自分から読みたいと思わない。歴史小説好きの方がど
んな風に楽しんでいるのか教えていただきたい…。
 しかし、この作品は読み始めると止まらなかった。




 遣唐使の時代の話である。南條が調べたところ、親子2代にわたって唐に
わたったのは小野石根と小野道麻呂親子だけだったという。そこで南條はこ
の親子を主人公に悲劇の物語を考えた。
 石根は唐での使命を十分果たし、日本にまもなく帰れるというところで襲撃
者に襲われ、日本には帰れなかった。日本では石根は彼の地で亡くなったと
思われていたが、実は生きているかもしれないと同じ留学生高階達成が、石
根の妻衣子に伝えにくる。息子の道麻呂は自分も遣唐使となって唐に渡り、
父捜しをする決心をする。ようやく唐にわたったが道麻呂はなかなか父を見つ
け出すことができない。すべてが徒労に終わり、いよいよ別宴となった。その
席で道麻呂はめずらしいものを見かけた…。

 舞台が異国であるところ。そこに見世物の一団が登場するところ。
主人公が海に身を投げるところ。「月ぞ悪魔」との共通点が印象に残る。
 南條は歴史ものをたくさん書いた。「歴史ならば、こちらも知らないが、
読者も大して知りはしない。勉強さえすれば何とかなるだろうと考えたのだ。
事実、よく勉強した。最初の中の原稿料はすべて書物代に投入した。」とある。
彼が小説を書く気になったのは、40を過ぎてからだそうで、高校時代の文学
耽読の効果がよみがえったものだという。
 その他私が面白かったのは「水妖記」であった。
 
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by nokogirisou | 2006-01-03 20:20 | 本と図書館
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