佐野洋子の父と母

 絵本『100万回生きた猫』や詩集『女に』の挿絵の佐野洋子の文章
は、なにか力強い引力で私をひっぱる。新潮社の「波」に「シズコさん」
という、自分の母についてのエッセイを連載しているが、これがまたなか
なかすごい。ずっと離れてくらしていた母をひきとって彼女はいっしょに
生活している。
 親子関係というのは、まったく一筋縄でいかないのだとしみじみと
思う。きれいごとではない。激しい葛藤、しがらみ、愛憎劇。佐野洋子
の場合も、今はすっかり超越しているが、いろいろあったようだ。けれ
ども、彼女は若いころ、母から逃れている。これは賢い、自立した判断
だったと思う。だから今も客観的に母親を見ている。
 今月号はお父さんの死にまつわるお話だった。そして父の死を通
して、彼女の母を描いている。母の存在感はすごい。彼女の書き方
がまた見事で読ませる。
 佐野洋子の父は彼女が19のときに2年間寝たきりで、原因不明の
病気で亡くなった。そしてその父が亡くなったあと、母も佐野洋子も
ほっとしたという。「死んで嬉しいのではない、母も私も。」と添えてあっ
たがその気持ちはとてもわかるような気がした。彼女は母よりも父を
愛していたという。それは、この文章からもとてもよく伝わってくる。
でも父はやはり家族を圧迫していた。一種残酷な狂気もあったという。
 いい人かどうかと、その人間を愛するかどうかとは、全く別の問題な
のだと私はしみじみ感じた。
 そして、佐野洋子の母は、佐野洋子の母なのである。たくましく強く
そして…。
[PR]
by nokogirisou | 2006-04-12 04:58 | 本と図書館
<< 散歩ブレンド 映画「明日の記憶」 >>