『他人を見下す若者たち』速水敏彦

 
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 この本は、日本人の感情が変わってきているの警告する。
 キーワードは「仮想的有能体」である。これは、他者軽視をする
行動や認知や行動に伴って「自分は他人に比べてエライ、有能だ」
と思う感覚のことだ。自分が過去にがんばったとか努力したなどの
経験的な根拠がない自信である。これは、個人主義文化や、ITメデ
ィアの影響の中で身につけてきた感覚だと筆者はいう。 

 現代の若者の悲しみは、映画「ライムライト」の中に流れる悲しみと
は違う…というのが象徴的だった。悲しみの質が変わっているという。
現代人の多くが味わっている悲しみは、自分で欲望を抑えた悲しみで
はない。自分の欲望が満たされないとすぐに自信を喪失し落ち込んで
しまうような悲しみだそうだ。自分の努力や能力の無さを認めることな
く、この悲しみは怒りに通じていく。思い当たることをあちこちで見聞き
している。

 私が、最近とてもこの世の中がこわいと感じるのは、相手の落ち度を
とことんあばき、責任を追及していく流れである。朝日新聞対NHKのよ
うな企業間の対立、メール問題をめぐる自民党と民主党の対立、また
有名人の離婚訴訟等々。筆者は自分の落ち度に向かう前に相手の落
ち度を指摘することは、個人主義社会を生き抜く知恵だと書いていたが
そういう、他人を思いやらない、自分のことを棚上げして他人を責める
傾向は恐ろしいと思う。
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by nokogirisou | 2006-04-20 23:30 | 本と図書館
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