『愛するということ』小池真理子

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 あまりにもストレートなタイトルで、おおっという感じだが、櫻井浩の装丁
に惹かれて買ってしまった。
 これは、小説という形をとりながら、小池の恋愛観を語った哲学書かも
しれない。
 ストーリーはシンプルなのだが、女性の心理がとてもこまやかにうまく
描かれている。特に、愛する人を得て後、失ったその後の心理がとても
うまいと思った。嫉妬心とそれをどうにもできないもどかしさ。
 最初に登場する映画が伏線である。映画は全編通したキーワードという
か、背景になっている。
 印象に残っているのは、「ユリイカ」という主人公が働いている、青山の
骨董通りのオアシスだ。ソフトドリンクと軽食と趣味の本を扱っている。そん
な商売が成り立つことが不思議だったし、とても行ってみたい気がした。
 もうひとつは、愛する人を失ったあとに一度会っただけで、ベッドをともにし
友情を感じる拝島悟郎という役者の台詞。
「一回、書いてしまったものはさ、消しゴムで消そうったって、だめなんだよ。
消えないんだよ。そういうことがわかっていないやつは、どうかって思うよ。」

 しかしもっとも印象深く、この本のテーマをひとことで、書いてしまっている
言葉は、最終章の次の一節だ。
 「愛は、うつろいやすく冷めやすいものと相場が決まっているが、自分
の情熱をごまかさずに生きたことを私は誇りに思う。愛なんかくそくらえだ、
という柿村の言葉は、愛なくして生きられない、という人間の反語なのだ。」
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by nokogirisou | 2006-05-30 23:09 | 本と図書館
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