『真鶴』 川上弘美

 川上弘美は、好きな作家の一人だ。小川洋子のナイーブさにくらべ
川上の感覚はとてもなまなましく、むしろリアリティがある。
『真鶴』は刊行された直後から気になっていたのだが、ようやく手に
入れ、一気に読んだ。真鶴は、私もかつて行ったことがある。中川一政
記念館に行った。とても忘れがたい土地である。

 京は、年老いた母と、思春期まっただなかの娘百と暮らしている。夫
はわけもわからぬまま失踪。夫の日記に残されていた「真鶴」と「21:00」
という文字に京はずっとひきづれている。
 京は、百の成長していく姿を直視するのが苦しい。自分に近かった娘
が遠くなっていくのを実感している。「むっつり」してしまう百。年齢のせい
なのか、父親不在のせいなのか。京は自分もかつて百と同じよう母を傷
つけていたことをようやく知る。母と娘とはそういうものなのかと思う。
 京は何度か真鶴に赴くが、それは、彼女についている女性が呼ぶから
である。この女と京との関係は、とても不思議だが現実味あり目が離せ
なくなる。
 そして、もうひとつ。男と女の関係が、さりげないがとてもよく描けている
と私は思う。ものたりなく思う人もいるだろうが、かなり本質的に書いている
と私は思った。京は母であり、娘であるが、恋人がいる。人間は多面体だと
つくづく思う。そして、愛したいし確実に愛されたいと思う哀しい存在なのだと
思う。そして、どんなに好きでも、別れというのがある。いつの世もどこの世
にもありふれた男と女。けれど、どの関係もそれぞれたったひとつの組み合わせ。
ふしぎなめぐりありと運命による。

 
a0023152_1824217.jpg

[PR]
by nokogirisou | 2007-07-22 17:55 | 本と図書館
<< 小説とテレビドラマと バー町田 >>