『青い光が見えたから』講談社 高橋絵里香著

 
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 タイトルが抽象的なのだが、これは中学卒業後単身でフィンランドに留学した高橋さん
の体験記である。
 著者は北海道出身。フィンランドに留学したいと考えたのは小学生のときだという。
トーベ・ヤンソンの『ムーミン』シリーズに惹かれて真剣に考えたという。その後、家族
の応援もあって本格的に留学の準備を始める。ちょっとわかりにくかったのは彼女の
中学生時代の日本の「管理画一的」教育に対して悩むところだった。いまどきまだこんな
中学校があるのかと驚いた。
 とにかく16歳の高橋さんは、フインランドへ旅立つ。それも1年間の留学ではない。
高校卒業をめざして出かけた。もちろん日本でフィンランド語を勉強してきたが、いきなり
授業を受けるのは難しかった。けれどもあたたかホストファミリーや友人たちと出会い、
たくましく充実した学校生活を送るようになる。
 興味深いのは、フィンランドの高校生活だ。教科書を詰め込むだけでない勉強。
発表の多い授業、事柄の暗記だけでは対応できない記述式のテスト。卒業試験などは、
1科目3時間もかけて取り組むという。だからみんな真剣に勉強する。じっくり学びたい者
は4年かけて卒業してよい。高橋さんも4年かけて卒業することを選んだ。
 高校生たちは、部活動に拘束されない。清掃すらしない。学食での食事も授業料も
無料である。それぞれが自分の選んだ科目をしっかり勉強し、ダンスパーティーやキャンプ
など楽しむときはとことん楽しんでいるようすだ。
 フィンランドの高校生は温かく、なかなか鋭い。友人たちは心から高橋さんを励まして
いる。日本人にこれほどのつきあいができるだろうか?また高橋さんは彼女たちの宗教心、
キリスト教に対する信仰の深さに心打たれていた。おもしろかったのは、自信のなさから
すぐに「ごめん」と謝ってしまう癖に対してフィンランドの友人たちから指摘されたところだ
った。私も若いころよく「ごめん」を連発していた。これは日本人の癖なのだろうか。
 フィンランドで高橋さんは自分を客観的に見つめ直していた。だからこそこの本が生ま
れた。 高橋さんの積極的で、のびのびした体験記を読んで私はフィンランドに好感を抱いた。海外への思いが強まっていくのを感じる。
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by nokogirisou | 2007-09-09 15:58 | 本と図書館
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