『おいしいコーヒーのいれ方Ⅸ』村山由佳

  私の周囲の若い男性、男の子たちは、みんなこの「おいしいコーヒー」
シリーズが大好きだ。文庫化を心待ちにして、こっそり読んでいる人たち
がけっこう多い。私はいつもそういう人たちから、借りて9巻まで読み続けて
きた。村山由佳は気になる作家の一人ではある。掴みがうまいし、台詞で
読ませるし、どきどきする展開にひっぱられる。でもなんだか軽さ、設定の
安易さが気になる。最近作風は少しずつ変わってきてはいるが、「おいしい
コーヒーのいれ方」の世界はずっとそのまま。でも読まずにいられない「味
の素」のような魅力がある。
 陸上部の大学生勝利と5つ年上の奥手のかれんとの恋愛はなかなか
進展しないが、だからこそ読ませる。日常的な気持ちのすれ違いや、相手に
頼ったり、頼っていいのだろうかと不安になったり、相手はどう思っているの
かと不安に思ったり葛藤したりという、ありふれた恋愛感情の機微の書き方
にリアリティがある。
 今回のサブタイトルは「聞きたい言葉」。たしかに私たちは相手から聞き出
したい言葉というものをもっている。その人の口から聞きたい言葉がる。しかし
現実にはなかなか相手はそれを言わない。けれどもここでは、最後にちゃんと
互いに言い合っている。小説や漫画の中の恋愛ごとが、ここに再現されている。
それが心地よいのだと思う。自分もそんな言葉を言ってもらいたい、自分も
言ってみたいという願望がどこかにあるのかもしれない。
 
 
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by nokogirisou | 2007-09-22 06:40 | 本と図書館
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