斎藤美奈子講演会「文学との付き合い方」

 新潟市中央図書館開館記念講演会「文学との付き合い方」を
聞きに行った。会場は「ほんぽーと」の3階びーんずホールにて。
斎藤氏は新潟市出身。同じく新潟市出身の作家火坂雅志と高校時代
同級生だったという。
 斎藤美奈子の名前は『妊娠小説』以来、ずっと気になっていたが
本物にお会いするのは今回が初めて。批評ではずっぱずっぱと作家
を切り倒すが、実物は小柄なチャーミングな女性。目がとても特徴的
だった。なんともう50歳をすぎられたそうだが、私は彼女を見て、話を
聞いて50歳になるのも怖くないなと思った。 
 活字離れが叫ばれて久しいが、よく言われるように若い世代が活字
離れしているのではなく、年齢があがるにしたがって活字離れをしている
という。それは統計上明らかだ。また特に文学は歳を重ねるにつれて
敬遠されるものだという。なぜならば文学は恋愛、青春をテーマにした
ものが多く、歳をとるとそんなものはどうでもよくなるかららしい。
 彼女は、私たちに、時代ごとのベストセラー小説のリストにそって小説の
批評的読み方を提示してくれた。文学の読み方はいろいろあり、「共感」読み
「教訓」読みばかりしていては世界が狭まってしまう。何かに絡めて読む、
複数の本と比較する中で、本は立体的に見えてくると力説する。 
 彼女はその実例として渡辺淳一の『化身』『失楽園』『愛の流刑地』の3冊を
比較しながら、時代背景とリンクさせて読む面白さを披露してくれた。
 この3作共通点がある。ほぼ10年の間を経て3作が書かれているがいずれも
日経新聞の連載小説だという。どれもベストセラーになっている。しかしこの3作
は書かれた当時の日本経済を如実に反映している。『化身』はとにかく、華々しい。
主人公の男のはぶりがよい。『失楽園』では不倫カップルが様々な服を着、おい
しいものを食べ、あちこち旅をする。それに比べて最新作の『愛の流刑地』はとに
かく2人とも貧乏くさい生活をしている。なるほど。
 とにかく文学というのは、複数の本を、いろいろな観点から読んでみると新たな
発見があって、おもしろいぞというお話だった。
  たくさんの小説が引き合いにだされ、紹介されたが、おもしろかったのは
近代文学はクラシック音楽でたとえるとヨハン・シュトラウスの「青き美しきドナウ」で
現代小説はラヴェルの「ラ・ヴァルス」だというところ。なるほどと思った。近代文学
の線の太い、わかりやすい安定した筋立てに比べ、現代小説はゆらぎがあり不安定。
おもしろい比喩だと思った。
 ミーハーな私はその後、斎藤氏にサインまでしていただいたのだが、一言交わして
みて、そのおちゃめさに魅了された。まるでいたずらっ子のような表情だった。
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by nokogirisou | 2007-10-06 19:34 | 本と図書館
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