『声が生まれる』竹内敏晴

 「ことば」を見つけるとはどういうことか。
私はいったいどうやってことばを獲得してきたのだろう。
人前で、なかなか上手にしゃべれず、落ち込んだ経験は
たくさんある。人にわかりやすく話しをすることの難しさを
話し始めて何十年も経つのに、まだ感じている。
 「自分のことば」を見つけ出すためには、意志を持って一つ
一つのステップを踏んでいかねばならないと竹内氏はいう。
 この本は、16歳で聴力を獲得し、ことばと格闘した竹内氏の
実体験から始まる。耳が聞こえなくて、話すことが不自由だった
経験を持つ竹内氏は私たちが忘れたいたことを提示してくれる。
 息をはかなければ声は出ない。当たり前のことだ。息を吐くには
息をすわなければならない。けれどもそれだけでもたりない。一音
素一音素丁寧にコントロールしつつ発声しなければ、粒のそろった
ことばにならない。そういうことを私は全く忘れていた。竹内氏は
大学卒業後に新劇の裏方となり、その後演出となり、より具体的に
声とことばについて考えるようになる。演劇人を経て、市民とワーク
ショップを行い、様々なレッスンを重ねる中で、声とことばに対する
発見が続いていく。
 私自身は、この本の中に引用されているスタニフラフスキーや
ル・グウィンや、メルロ・ポンティ、マルティン・ブーバーやハイデガー
のことばに触発されることが多かった。
中でも「話しかける」とは全心身での「アクション」なのだということは
とても納得がいった。
 実は、この本を読みながら、私がずっと知りたかったことが何であっ
たか見えてきた。私たちが「ことばが通じない」と思うときの絶望感は
どこからくるのか。「まことのことば」を語ることができたという喜びは
どういうときに得られるのか。これは私自身の課題なので考えていか
ねばならない。
 
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by nokogirisou | 2007-10-11 21:26 | 本と図書館
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