「文化的雪かき」

 内田樹『村上春樹にご用心』を読んだ。なかなかすごい本だと思う。数多く
の村上論が書かれる中で数少ない「おもしろい」本にであったと思う。まだ読
んでいる途中であるが…
内容的には、内田氏のブログと重なる部分が多いが、まとめて読むとまた
違って見えてくる。
内田は村上の仕事を「文化的雪かき」だという。

 雪かきとは、本当にむなしい仕事である。
かいてもかいても、またすぐに雪はふる。
だけど雪をかかないと、身動きできないし、みんなこまる。
だからだれかがやるしかない。やったからといって誰にほめられることは
ない。
 うちの母の自慢は、雪かきが上手なことだった。だれよりも早く丁寧に
雪かきをする。ほめられることもなく毎年、毎日彼女は雪が降ると雪かき
をした。
 ある日、早朝やってきたブルドーザーの運転手に母は雪かきのうまさを
ほめられた。彼女は彼の一言に満足を覚えたらしい。雪かきをすることは
彼女のほこりだったのだ。それを認められてとくとくとしていた。
だから何年も何年も、雪国で雪かきをはいりきってやり続けてきた。たとえ
一人であっても、彼女は自分の仕事をみとめてくれる人がいたからこそ
やり続けることができたのではないだろうか…。
村上春樹の仕事は
「『ダンス・ダンス・ダンス』で「文化的雪かき」と呼ばれた仕事に似ている。
誰もやりたがらないけれど、誰かがやらないと、あとで誰かが困るようなことは、
特別な対価や賞賛を期待せず、ひとりで黙ってやっておくこと。」
 村上春樹も特別な対価や賞賛を期待はしていなかったのかもしれないが
実際には彼の仕事に対しては対価が払われ、批評家からは辛口を叩かれた
としても、多くの読者からは賞賛を得ている。
 だからこそ、ここまで続けられたのではないか。反応がなかったら、やはり
なかなか文化的な雪かきもできないように私は思う。
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by nokogirisou | 2007-10-24 04:50 | 本と図書館
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