『ユーリーとソーニャ』アンリ・トロワイヤ著 福音館書店 

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 『ぐりとぐら』の山脇百合子が翻訳し、『りゅうのめのなみだ』の絵を描いた
太田 大八 が表紙絵を描いているので手にとった。「ロシア革命の嵐の中で」
という副題もついている。胸騒ぎを覚えながら読んだ。
 平和なロシアの裕福な家庭の描写から始まっている。古きよき時代の生活。
これまで読んできた外国の物語に出てくるようなすてきなごちそうの数々。あた
たかなクリスマス。この平和がどう崩れていくか。どきどきしてページをめくる。
 この物語はユーリーというこの家の男の子の目を通して描かれている。
華やかだが心配ごとの多い両親と、堅苦しく、進歩的な家庭教師、母親のお気
に入りの使用人ドゥニャーシャとその娘のソーニャ。その他の多数の使用人たち。

 子どもたちにはわけもわからないうちに世の中はどんどん変化していくものだ。
女と子どもはそれに翻弄されるばかりである。社会主義思想が浸透していくにつれ
て多くの農民や使用人たちは富裕層たちに反逆し、人間関係に溝ができていく。
ユーリーの父のような金持ちは迫害され、追われるようになる。ユーリーは自分
につきまとうソーニャのことを初めは好きではないのだが、革命派に追われ、父を
追いかける逃避行の厳しい旅の中で自然と彼女との恋に落ちていく。
  一方で、逃避行の悲惨でつらい旅が描かれ、一方であわい初恋が描かれる。
あわい…とはいってもこういう状況下での歳若い男女は親しくなるばかりである。
二人の接近具合にはまたどきどきさせられる。
 ユーリーはこの旅と恋を「冒険」ととらえ、少しもめげず、嘆かず、進んでいく。
彼らの危なっかしい旅をいつも支え、なんとかするのはソーニャの母のドゥニューシャ
だった。
 ドィニューシャのたくましさを見ながら、また次から次へのトラブルの中、おぼっちゃま
だったユーリーが少しずつたくましくなっていく様子が心地よい。
 しかし、最後は思わぬ終わり方をする。ほかの多くの子どもの物語のように大団円
では終わらない。「え?どうして」「そんな」と思わず声を出したくなるような終わり方。
むしろ私はリアリティを感じた。
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by nokogirisou | 2007-12-01 06:39 | 本と図書館
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