村上春樹 『沈黙』

 『レキシントンの幽霊』の中に収められている短編を再読した。
なんでこの作品を読もうと思ったのかというと、たしか新潟が出てきた
ように記憶していたからだ。
 どこだっけ…とページをめくる。
 「僕」と大沢は空港で新潟行きの飛行機を待っているのだった。新潟
そのものは出てこない。12月の初めに、新潟はひどい雪が降って
いることになっていた。今年の12月の初めはたしかに新潟はひどい天気
だった。
 「僕」と大沢さんの関係はよくわからない。とにかく僕の「これまでに喧嘩
をして誰かを殴ったことはありますか」という質問に対して、大沢さんは
コーヒーを飲みながら、一度だけある人を殴った重い話を始めるのだ。
その殴ったことがきっかけで、殴った男の復讐に遭い、大沢さんはとても
怖い思いをすることになる。クラスの誰も大沢さんと口をきいてくれなく
なるのである。自分がいるのに、まるでいないように扱われるのだ。

 そして、以前も立ち止まったと同じ大沢さんの台詞で、私は立ち止まった。

「でも僕が本当に怖いと思うのは、青木のような人間のいいぶんを無批判
に受け入れて、そのまま信じてしまう連中です。自分では何も生み出さず、
何も理解していないくせに、口当たりの良い、受け入れやすい他人の意見
に踊らされて集団で行動する連中です。」

 大沢さんの物語の後には沈黙が訪れる。
 沈黙のあとに2人はビールを飲みにいくのである。

 教訓で終わっていないことに私はほっとする。
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by nokogirisou | 2007-12-14 21:36 | 本と図書館
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