今気になっている本

 新潮社の「波」を定期購読している。この新刊書評や連載を
楽しみに好んで読んでいる。
保阪正康の『即位と崩御』などは好奇心のみで読み続けている。
2月号で気になったのは『そうか、もう君はいないのか』特集だった。
昨年の3月22日に城山三郎が亡くなったのはまだ記憶に新しい。
その城山が死の直前まで、妻の記憶を原稿に書きつづっていたと
いう。
 夫が妻に先立たれ、ぽっかり空虚な気持ちになるというテーマは
繰り返されている。江藤淳も眉村卓もそうだ。
 私がこの本に興味を覚えたのは、映画作家の河瀬直美と児玉清
の書評を読んだからだ。2人のこの本の紹介の仕方にそそられた。
河瀬のキーワードは「丁寧に生きてゆく」と「役割」である。彼女は
この書評の中で、自分がなぜ映画制作をするかを書いている。
 「成し遂げられなかったことがあったとしても、それがわたしの人生
であるということを受け入れられた。そうして今ことのときを生きる『役
割』の一部に映画制作はある」
 児玉氏の書評はベタなのだが、ストレートに紹介しているが故に
城山の作品の魅力が伝わってくる。児玉氏の声がきこえそうな文章だ。

 もう一冊気になったのが『月のころはさらなり』
新潮エンターテイメント大賞をとった作品だが、この作者が書いた
「受賞の言葉」の引用に惹かれた。
「人を亡くす哀しみなんて、当たり前のことを一行だったって書いてやる
もんか。世の中には、理不尽なことや酷いこと、どうしようもないことが
いくらでもあって、それをただ書いても仕方がない。私が知りたいのは、
読みたいのは、それでも生きていけると、大丈夫だと、そう思える何かだ」

 「書く」ということはどういうことかを考えた。
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by nokogirisou | 2008-01-31 06:23 | 本と図書館
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