鍵冨弦太郎のチャイコフスキー ヴァイオリンコンチェルト

 第50回東京交響楽団定期演奏会の話題のつづき。
二曲目はチャイコフスキーのヴァイオリンコンチェルト二長調。
ソリストの鍵冨弦太郎が登場する。細身のはにかみやの鍵冨くん。
 序奏の間、まだ鍵冨くんは緊張しているおももちだったが、なめ
らかに出番が始まる。繊細な音色である。のびやかに主題を演奏
する。すっかりプロの顔になっている。前回のリサイタルのときよりも
ずっと成長したように感じる。7月のときはちょっと不安定な感じが
あった。まだまだ若いなという印象が強かった。今回、オケとの共演
という重圧をどのようにクリアするか最後まで目が離せない。
 カデンツァもなかなか見事だ。フルートがこの曲でこんなに
大事な役割だったとは今日初めて意識した。視覚と聴覚がいっしょ
になると本当にすばらしい。やはり生はよい。しかし、どきどきする。
劇的に第一楽章がおわると、観客はおもわず拍手してしまう。
 こちらの心配もよそに、すぐに二楽章の準備をする鍵冨くん。弱音器
をつけたのだろうか、ちょっと音色の違う音がする。ゆったりと歌うような
感じ。メランコリックな旋律がすてきだ。
 そして3楽章。軽快にスタートするが途中テンポがとってもゆっくりに
なったかと思うととても速くなり、変化があって楽しい。おなじみのメロディ
が出てきてうれしい。
 おわってほしくない。いつまでも聞いていたいと思ってしまうような演奏
だった。
 よかった。本当にすばらしいコンチェルトだった。ブラボーと盛大な拍手。
鍵冨くんは五回くらい出たり入ったりをくりかえしていた。
 
 ところで、今回の指揮者、ドミトリー・キタエンコ氏はなんと、1990年に
諏訪内晶子がチャイコフスキーコンクールで優勝したときモスクワ・フィルの
指揮をふった人である。キタエンコ氏はあたたかく鍵冨くんを見守っていたよう
に私には見えた。
 私は諏訪内晶子の優勝者記念コンサートのCDを持っている。
 諏訪内の音色は、鍵冨くんよりももっと強く線が太い感じがする。鍵冨くんの
今回の演奏はとても繊細で、細部の変化が美しい。諏訪内のつややかな
音色とは質が異なるように思った。
 ヴァイオンリンは、奏者によって本当に音も表現も異なる。このコンチェルトは
名曲だと思う。もう一度、さらに成長した鍵冨くんの演奏を聴いてみたいと思う。
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by nokogirisou | 2008-10-19 22:50 | 音楽
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