『尾道坂道書店事件簿』 児玉憲宗著

 『尾道坂道書店事件簿』を読んだ。

 広島県の「啓文社」という書店チェーンにつとめる児玉憲宗氏の
書店と本をめぐるエッセイ。尾道が舞台だ。
 尾道に惹かれる。書店に惹かれる。それで手にとった本だが、書店
をやっていく醍醐味が伝わってくる興味深い内容だった。
 ここに出てくる『明日の広告』(佐藤尚之著)『劇場としての書店』福嶋聡著
の本も読んでみたいものだと思った。
 児玉氏自身は現在店に立たない。一括仕入れ窓口を担当している。彼は
29歳で多発性硬化症と診断され以後車いすの生活を送っているそうだ。
両下肢麻痺だが、そのおかげで今まで見えなかったものが見えるようになっ
たという。その上、ようやく落ち着いた頃、悪性リンパ種も発症。入院、抗ガン
剤治療。再発。それらが少しもしめっぽくなく、語られほっとする。「僕はがん
ばっているんだよ」という力んだメッセージもなく、書店員として一市民として、
父親として、夫として自然に生きている姿がうきぼりになる。
 今ではこんなに本が好きな児玉さんも高校を卒業するまではまったく本を
読まなかったという。大学に入ってから暇つぶしのために読み始め、好きな
作家をかたっぱしから読もうと思ったそうだ。 本との出会いは本当に縁だと思う。
 児玉氏は、本を語り、広島を語る。広島にゆかりのある画家や漫画家を
紹介し、広島の文化を語る。私は意外と広島のことを知らなかったことを自覚
した。こんな書店のある広島にこの夏行ってみたいと思う。


 
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by nokogirisou | 2009-05-17 10:17 | 本と図書館
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