『アカペラ』山本文緒  新潮社

  「待望の復帰作にして最高傑作」と帯にあった。
本当に、いい小説だった。ひさしぶりに建前でなく
おもしろいと思える小説だった。無理矢理焦って
読むのではなく、何かに推進されるようにして物語り
を追った。
 3つの中編。どれも読後に何かささやかな幸福感
を予感した。
 血のつながらないじっちゃんとくらす健気な中学生
を描いた「アカペラ」。
 ダメ男を自称し、家出した実家に20年ぶりに戻って
きた春一を親友の武藤はスナフキンと呼ぶ。周りの
女の願いをすべて叶えようとするから逃げ出したくな
るのだと図星をつかれる「ソリチュード」
 病弱な弟と暮らす、静かに自分の人生をうけいれる
50歳独身の姉。そして、その姉弟に接近するココア
との不思議な関係を描く「ネロリ」。
 どれも「偶然」が物語を推進するが、それゆえに人生
のこまごまとした不思議を考えさせる。
 それにしても、やっぱり小説って学校の教科書で読ん
で、あれこれ勉強するものではないなと思う。こっそり、
一人で読んで、じんとくるものではないかと思う。
 小説には人生が描かれるから、死と性と暴力がつきもの
だ。これを明るい日向に持ち出して、あれこれと論ずるのは
ちょっとはずかしい。
 この小説には、普通ではないかもしれないが、うそっぽくない
「愛」が描かれている。それが魅力なのかもしれない。
 
 
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by nokogirisou | 2009-06-15 01:32 | 本と図書館
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