「ダブルファンタジー」 村山由佳 著

 
a0023152_21475371.jpg
 
この夏『1Q84』と『ダブルファンタジー』を読んだ。どちらも性が
重要な役割を果たすが、とても対照的な作品であるという読後感を
持った。生き続けるとは人と関わりつづけることだけれど、孤独をどれ
ほど意識して生きているか…。何をどれくらい求めるかによって人生
模様は変わってくるのだとしみじみ考えさせられた。
 『1Q84』はまだ十分語る準備はできていないので、後日あらためて
書くつもりだ。
 正直に書けば『ダブルファンタジー』に対して私はあまり好感を持て
なかった。村山由佳は決してきらいな作家ではない。また、この作品は
男たちをうまく書き分けているし、小説としての構成もまずくないと思う。
だけれども、主人公の高遠奈津に私は少しも共感できなかった。
 それは彼女に、人間関係を大切に作って行こうとする姿勢を感じられ
なかったからだ。その場の自分の欲望と感情で関係を結ぶだけではむ
なしい。
 被害妄想と自己嫌悪だけでは、前に進めない。
 奈津は、売れっ子で才能ある脚本家という設定だが、実生活の上では
想像力が不足しているように感じてしまう。
そして、夫から生活の上でも、創作の上でも抑圧されていると思っている。
そこから飛び出せば、もっと自由に生きられ、もっと官能的な生活を送る
ことができると思いこんでいる。けれども、憧れの演出家と関係を持って
も、結局突き放され、かつてつきあっていたこともある先輩と再会して関係
を持っても満たされず、若い役者と新たな関係を結んでいく。いつになっても
満たされないばかりか、彼女の仕事の上で成長も発展もみられない。
 読後にむなしくなる作品だった。
 
[PR]
by nokogirisou | 2009-09-02 06:58 | 本と図書館
<< 『のぶカンタービレ』辻井いつ子... いざ、まほろば同窓会へ2 >>