『のぶカンタービレ』辻井いつ子著 アスコム

  ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで今年優勝した全盲の
ピアニスト、辻井伸行の母親による、伸行の13歳から19歳の記録で
ある。私が辻井伸行に興味を持ったのは、彼の師匠が私の好きな
ピアニストの横山幸雄だったからである。
 もっと前に読んでもよかったのだが、 「伸行の母が綴った、本当に
あった感動の物語」という帯の文句に引いていた。内容のすべてが想像
できてしまうようで、今まで読む気になれなかったのだ。しかし今回読んで
みて、なかなか興味深い本だと思った。

 (緑内障治療で有名な大学病院医師の担当する眼科に通っているの
だが、毎度大変な待ち時間である。予約時間に飛び込んだがバッグに
たまたま本がなくて、病院の売店でこの見つけて偶然読んだ。待ち時間
1時間30分でほぼ読めた。)

 「プロになるということは後戻りできない山道を行くようなもの。一度登り
始めたら、その山を途中でおりることはできないんですよ」
これは盲目の演奏家武久源三氏が、著者である伸行の母に言った言葉
だ。これは、本当にリアルな言葉だと思う。つらくなったらやめればいい…
ということは、実際に通用しない。ピアニストというプロの世界に飛び出すと
なれば、この言葉の厳しさは、一層強まる。
 辻井伸行が17歳でショパンコンクールに挑戦していたことを私は知らな
かった。そのコンクール出場の記録は、中村紘子の著書とも重なって、
大変過酷で、緊張感あるものだということがよくわかった。
 この本には、一人のピアニストが独り立ちに向けて歩み出すようすが
生々しく描かれていて、親離れ、子離れのテキストとしても読むことができ
ると思った。
 そして、ニコニコしながら身体を揺すって演奏する姿は、テレビで何度か
見ていて、気になっていたのだが、実はそれが彼の調子がよいときの兆候
であることを知った。
 生の演奏を聴いてみたいものだと思った。調べるとなんと過去に新潟の
りゅーとぴあに来て演奏していた。貴重な機会を逸していたわけだ。

 
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by nokogirisou | 2009-09-04 02:15 | 本と図書館
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