「2本の木」夫婦のきずな NHKドキュメンタリー

 このところ、どうしたことか闘病記ばかり読んでいる。今は中島梓の
『転移』を読んでいるところだ。自分の死をも時々考える。どうやって
死んでいくのか。死にいたるまで、決して楽でないことは容易に想像
できる。自分はそれを耐えられるのだろうか。残していく家族に自分
は何ができるだろうか。
 偶然、この番組の予告を見て、そのまま終わりまで見てしまった。
平成19年に亡くなった、元NHKディレクター小沢爽さん夫婦の記録
である。二本の木とは、もちろん自分たち自身の比喩である。
 彼らが残したノート、日記の言葉を片岡仁右衛門と竹下景子が朗読
する。二人の写真、子どもたちの残した映像などが折り込まれる。
背後に流れるバッハの無伴奏チェロ組曲がたまらなかった。二人は朗読
しながら、涙をがまんできない。
「決して特別な話ではないが」と息子さんは言う。「番組になってよかった」

 始まりは、奥さんの千緒さんの肺ガン発病だった。
 千緒さんの看護をし、死を意識した生活の中で、爽さんは自らも進行性の
胃癌であることがわかる。互いに「戦友」と称し、死を覚悟しながら、ともに
すごせる時間を感謝して生きている。

 美談でなく、丁寧に自分たちの日常を生き、いとおしみ、感謝の気持ちを
忘れないようにしている姿が心をうつ。死までのありのままが綴られている。
互いをどんなに愛し、思い合っていても病の家族を抱えることは、疲れるし、
苦しいことだ。病む当人も、自分のために疲れ、苦しむ家族を見てさらにつらく
なる。
 ある時は「それでも生きたい」と思い、ある時は運命だと受け入れようとする。
 とにかく千緒さんという奥さんは、覚悟のできた人だと思う。とても客観的
に自分と夫と家族を見て、本当にいきいきと正直に記録をつけている。
爽さん自身も、くじけそうになる自分をそのまま表現し、そしてつぶさに千緒
さんを観察する。
  
 明るく前向きで、活動的だった千緒さんが、だんだん弱っていくようすが映像
の中でしっかり映し出されている。がんの苦しみがリアリティを持ってせまって
くる。この苦しみは、すべての人間に平等だろう。早い遅いはあるにしても。

 千緒さんの記録のことばには気弱さがなく、夫を気遣うゆとりすらある。「自分
でできることは自分でする」「毎日を丁寧に生きる」、そういう信念がちりばめられ
ている。そしてそういう気持ちは、残された爽さんの心にひきつがれていく。
 そして半年後に、爽さんも千緒さんのもとへ逝ってしまうのだ。
 
 私自身、死ぬときは、じたばたしてしまうと思う。しかしせめて、感謝の気持ち、
その時まで生きられたことの喜びを忘れずに最期のときを迎えたいものだ
と思う。 
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by nokogirisou | 2010-01-09 23:04 | 日々のいろいろ
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