カテゴリ:アート( 56 )

有元利夫展ー天空の音楽ー

 新潟市美術館で開催されている有元利夫展に行ってきた。
有元の作品とは、宮本輝の本の表紙で出会った。たった一人
の静謐な女性の姿がずっと気になっていたのだが、1985年
に38才で病に倒れた画家と知って、ショックを受けたことを
覚えている。彼が画家として活躍したのはたった10年。
2010年に東京都庭園美術館で開かれた有元利夫展に行こうと
思いながら、見逃してしまったことをずっと残念に思っていた。
 昨年、新潟日報紙上で、新潟市美術館で標記の展覧会をやる
と知ったときは、縁を感じて前売り券を早々に購入した。
それでようく今日、その実物と対峙してきた。
 バロック音楽がしずかに流れる会場で、ゆっくり有元の作品
を見る時間は、本当に至福だった。こんなにのんびり、リラッ
クスして絵を楽しめたのはひさしぶりかもしれない。
 キーワードは浮遊と音楽だと私は思った。
 絵の中にはすべて舞台があり、そこにいるのは女性一人。と
ても象徴的だった。その表情は無表情で、二の腕が奇妙なほど
太い。それなのに、その女に惹かれてしまうのはなぜなのか。
 それと一つ一つの作品につけられているタイトルに私はどう
しても詩を感じてしまった。有元の日記の中の言葉があちこち
に紹介されていたが、それもまた意味深で、詩のようだった。
有元はバロック音楽がとても好きだったそうで、自分でも楽器
を演奏し、作曲までしている。彼の作った「ロンド」がミュージアム
ショップに流れていて、これもまた心地よかった。
 本当にいい時間だった。
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by nokogirisou | 2013-01-27 12:21 | アート

メトロポリタン美術館展

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東京都美術館で開催されている、「メトロポリタン美術館展」を見に行く。
作品は、自然のなかの人々、動物たち、草花と庭、大地と空など表現されているモチーフごとに分類されている。時代や国、表現方法はさまざま混ざった状態での展示で、新鮮だった。絵画と彫刻、タペストリーとキルトが並んでいるのはまたおもしろい。圧巻だったのは、やはりゴッホの「糸杉」だろう。しばし立ち止まってしまう。これにインスピレーションを得て坂本龍一が作曲した曲が、音声ガイドで紹介されていた。
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by nokogirisou | 2012-12-16 07:34 | アート

借り暮らしのアリエッティ×種田陽平展

 
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 映画『借り暮らしのアリエッティ』を見たのがついこの間のような
気がしていたが、もう1年以上経過していた。今回、アニメ映画の世界
がリアルに美術館内に再現されるというので、この展覧会に行くことに
した。私たちが小人を体験できるのだ。
 そこは楽しい世界だった。まるで遊園地のようだった。借り暮らしも
楽しそうだ。私たちの生活用品の数々が小人の生活に役に立っている。
アリエッティの部屋、ポッドの作業部屋、ホミリーの自慢の台所。一方
快適できれいなだけではない。ゴキブリもいれば、角砂糖をねらってい
るアリもいる。
 しかし、私が今回もっともおもしろかったのは、映画美術監督として
の種田陽平の仕事だった。映画のセットがこんな風にして作られている
ことを初めて知った。映画の脚本が書かれるのと同時に美術監督の仕事
は始まっている。どこの場所を舞台にするか。どんなイメージの場にす
るか。徹底的に考え、絵にしていく。そしてそれをもとに、セットが
作られていくのだ。その作業の総指揮をするのが、美術監督なのだ。
とても創造的な仕事だった。
 リアルな世界よりもできあがったセットの方がリアルで驚く。これらは
撮影終了とともに解体されてしまう。
映画を見るときに、もっと場や小道具に注目してみようと思う。
「悪人」のセットの一部も展示されていた。
最新作は三谷幸喜の「すてきな金縛り」だそうだ。
 
 
 
 
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by nokogirisou | 2011-11-06 23:31 | アート

弥彦野外アートギャラリー

 友人が毎年出品しているので、今年も行ってきた。
弥彦アートギャラリー。
天気がよくて、音楽を聴きながら海の道のドライブを
楽しんだ。海は穏やかで、釣り人が多く、巻漁港には
船がたくさん停泊していた。
 岩室温泉をすぎて弥彦にむかう。弥彦街道は情緒が
ある。弥彦文化会館前には、大きめの野外前衛アート
が並び、酒屋やよいと二村建築ショールームギャラリ
ーではまちなかギャラリーでやや小さい作品が展示
されている。それぞれ「ひらめき」と「意表」の
アートがせめぎあっている。作者の言葉を読むとふかー
いメッセージが伝わってくる。
 一番気に入ったのは「ツバサの芽」いちょうの若葉
をツバサにみたてたところがすてきだった。なんだか
あかるい展望を感じる。
 表現するというのはとても気持ちよいことなのだろう
と思う。カメラを忘れて会場風景を撮影できなかったの
が残念。


 
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by nokogirisou | 2011-10-16 16:05 | アート

プロのしごと

自分でモチーフを決め、描きたいものを
描きたいように描くのと、依頼主の希望
を聞いたうえで、自分のイメージを呼び
起こし、オリジナリティのある作品に仕上
げるのでは、ちがう。
後者は、プロの仕事だ。依頼に沿いつつ
自分の個性を最大限発揮するのは、冒険
である。しかも、それは、多大な取材や調査
の裏打ちが必要だ。しかし、それが腕の見せどころな
のだろう。時間はかかるし、職人のような
こだわりが作品の完成度を高める。
石居麻耶さんの本のイラストの仕事は、
段々に変化している。初期のころは、著者の
意向に出来るだけ合せていた。最近の作品は
より麻耶さんらしさが表現され、本にもあっ
ている。
ているが、独立した作品としても見ることが
できる。
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by nokogirisou | 2011-10-09 20:19 | アート

石居麻耶さんの個展

石居麻耶さんの万城目学の書籍イラストを
集めた個展が東京タワー近くのYOKOI FINE
ARTで開かれている。
幸運なことに、麻耶さんが会場におられて
一時間ほどお話をすることができた。
毎年秋の個展でお会いするが、私にとって
一年あっという間だか、麻耶さんは、この
時間にずっと制作をつづけ、完成させている。
私は、この一年何をしていたのだろうか?

麻耶さんの制作裏話は、とても興味深かった。
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by nokogirisou | 2011-10-09 17:01 | アート

太郎と敏子~瀬戸内寂聴が語る究極の愛~

 NHK総合テレビで「太郎と敏子~瀬戸内寂聴が語る究極の愛~」を見た。
岡本太郎はとても気になる芸術家でいくつかの著述を読んだり、作品を見たり
したが、謎の人であった。
 しかしそれよりなぞだったのは太郎の秘書であり実質的な妻であり、創作の
パートナーであり養女であった岡本敏子という女性だった。いったい何者なの
だろう。どうして50年にもわたって岡本太郎に関わっていられたのだろう。
 このたび、岡本敏子の仕事部屋から大量の資料がみつかって、瀬戸内寂聴
がそれを読み解いた。資料を通して、敏子の半生を描いた番組である。
 私が予測していたことが、瀬戸内寂聴の口から語られることがあり、納得でき
たり衝撃をうけたりした。

 二人の関係は50年の間に、変化しながらも 、ずっと深い愛があったのだろうと
思う。あるときは男女の愛、あるときは親子のような愛、あるときは友愛、あるとき
は師弟の愛、あるときは兄妹のような愛、またあるときは同志の愛。互いの結び
つきの強さは運命としかいえないように二人の関係だと思った。
 こういう生き方もあるのだとある種の感動を覚えた。一人の人間を闘いながら、
支え、ある部分の人生は犠牲にし、愛し続ける。しかし太郎死後の敏子はむしろ
表情が生き生きとし、のびのびと生きているように私には感じられた。太郎が生き
ていたときより一体感があったからか。それとも太郎の業績を世間の人に知らしめ
たいという使命感からか。彼女の表現力が輝いたのは、太郎の死後だと私は思う。
 彼女は自分が思っていたとおりに、太郎の仕事をまとめあげて、ある日突然に
亡くなった。平成17年。彼女の訃報に自分がとても驚いたことを思い出す。テレビ
で彼女の活躍ぶりを見たばかりだったからだ。
 
 青山の岡本太郎記念館と川崎の岡本太郎美術館を訪れること。
 そして岡本太郎の著作を読むこと。今年うちにできるだろうか。
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by nokogirisou | 2011-06-25 09:05 | アート

黒井健 講演会

 絵本作家、黒井健さんが新潟市のほんぽーとで講演をされた。参加申込み者
多数の中、なんとか抽選にあたって、聞きに行ってきた。
 これまで新潟や豊栄で開かれた黒井さんの講演会はほとんど聞いてきたし、
新潟での個展はすべて足を運んできた。毎回何かあらたな発見があり、私をひき
つけてきた。
 これまで、大学受験から、上京までの紆余曲折や、学研入社から絵描きになるま
でのご苦労は何度か聞いたが、今回印象に残ったのは、絵本作家となってからの
黒井さん自身の迷いや覚悟のお話だった。
 黒井さんは長い間「自分は絵本に向いていないのではないか」という迷いの中に
いたという。またシリーズものを描き続けるマンネリのつらさを味わい、「わかりやすく、
かわいい絵本」に対する懐疑に苦悩した。
 『ごんぎつね』が黒井さんにとって記念碑的な作品になったことの意味を、改めて
感じることができた。

また、今回ひとつの作品を完成させるために、何度も原稿を読み込み、膨大な取材
を重ね、何枚ものラフスケッチ、綿密な計画と準備を経て、長い時間とエネルギーを
費やしていることに感銘を受けた。また原稿を受け取ってから、描けないないこともたび
たびあり、何年間も放っておいて熟成を待つことがある話も印象深かった。

 黒井さんの新美南吉と宮澤賢治の理解は興味深く、私もこの2人の作家について
もっと知りたい、もっと調べたいという欲求に駆られた。この2人だけでない。黒井さんの
現役の作家対する観察と研究もなかなか鋭いものだった。

 黒井さんは今回「作品は、私はこう読ませてもらったという感想文のようなものです」
と言われていた。これは忘れられない言葉となった。自分の「読み」を表現する人の
決意のようなものを私は感じた。しかも「読む」ときに「理解しよう」とするのでなく「感じる」
ことを重視する姿勢に共感を得る。作品を繰り返し読み、作家を研究し、関係する場所を
取材しなければ、読者を真に満足させる作品はできあがらないのだ。こういうプロ魂に
私は魅力を感じる。
 
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by nokogirisou | 2009-10-18 22:57 | アート

石居麻耶「海の歌」

  YOKOI FINE ARTで10月9日から24日まで石居麻耶さんの
「海の歌」展をやっている。BUNNKAMURAでの「見果てぬ夢」から
約1年。麻耶さんの海に会いに行ってきた。
  YOKOI FINE ART は桜田通りに面した1階がampmの木内
第2ビルの6階にある。日比谷線神谷町駅から、東京タワーを眺めな
がら、心の準備をしながら歩く。ギャラリーに行くというのはけっこう
緊張することである。
 エレベータを降りると、麻耶さんの作品が見えた。ちょうどギャラリー
にお客は誰もいなかった。91センチ×91センチの正方形の板に描か
れた海。波、しぶき、泡。音が聞こえてきそうなリアリズムの海。だが
そこには麻耶さんだけの海の世界がある。海を描いているようで、実
はここに描かれているのは光だ。光を浴びた水の色がすばらしい。
 そこに久しぶりにお会いした麻耶さんが出迎えてくれる。とてもうれ
しい。丁寧に作品の解説をしてくださる。

 麻耶さんは少女のような雰囲気なのだが、語る言葉のはしばしから、
芸術家としてのプロの意識を感じた。

 どこの海を描こうかだいぶ迷ったそうだが、光の関係、波の強さ、色
から内房の海を選んだそうだ。1作品のためにとった写真は1000枚
以上。ちょうどいい光の具合が午後2時すぎだということがわかったそ
うだ。おだやかな、まったりとした海の感じが味わえる時間は実はそう
長くない。
  「招待状」という作品に惹かれた。「高波のあとの穏やかな波間に
きらめくいくつもの輝きは迷い人を招き寄せる手紙のようだった」という
リーフレットの言葉が詩のようだった。
 作品に近寄ると、けっこうでこぼこで、絵の具が立体的に重ねられて
いることがわかる。近づいて見たときと、離れて見たときでは、まったく
作品が違って見えた。
 今回は、モチーフを決めてたくさんの作品を描かれていたのが、ある
程度のところまでは並行して取り組むそうだ。それからは、個々の作品
に挑んでいくのだが、完成前にはしばらく作品を放っておくと言っていた。
熟成を待つかのようだ。これはアートに限らない。詩も小説も、あるいは
ほかの作品も完成前には寝かせておく必要がある。最後は客観的な目
で自分の作品を見つめなければならないのだろう。
 興味深かったのが、ギャラリーのスタッフとの関係である。作品のモチ
ーフや描き方、取材の方法などアドバイスをするのがギャラリーの方な
のだそうだ。まるで小説家と編集者のような関係だと思った。

 奥の方におどろくべき大作が待っていた。
 なんと下から見上げた東京タワー。この角度は大迫力だった。
海、海、海、海の後の東京タワーがとても新鮮で、ずっと見ていたかった。
 
 途中で、麻耶さんの芸大の先輩の方が来られたが、二人の話がとても
おもしろかった。画材や、額縁などの専門用語もとびかい、とまらない。
作品を描く作業は、孤独で、自分の世界を強く持っていないと描き続けら
れないように感じた。
 
 ひとりの画家を追いかけるという経験はこれまであまりないのだが、
麻耶さんの仕事を見続けることが、私の中の大事な喜びになっている。
自分の世界を守りながら、次々と新しいことに挑戦していく姿に私は何か
すがすがしい青春を感じる。
 
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by nokogirisou | 2009-10-16 23:09 | アート

石居麻耶「見果てぬ夢」

 渋谷のBUNKAMURAで行われていた個展に行ってきた。
Mayaさんだけの作品がギャラリーいっぱいに並び壮観だった。
Mayaさんは詩人である。そしてそのアートもまた詩的である。
「浮遊するいくつもの想いは
在るべき場所へと旅にでる
託された言葉を思い出したかのように」
いくつものMayaさんの想いが、在るべき場所へと飛んでいき、時間
をかけて、それぞれの作品となり、見果てぬ夢となる。
 どの作品も光が美しかった。
 花に注ぐ光、木々に注ぐ光、波の光、雲が吸収する光、プロフィール
にかかる光、街の光、雪に反射する光、落ち葉にふりそそぐ光。
 Mayaさんはどんどんビッグになっていく。
 
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by nokogirisou | 2008-11-19 23:02 | アート