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塔和子の死

 8月28日に急性心不全で塔和子さんが亡くなった。83歳だった。
私は新聞でその死を知った。ハンセン氏病、晩年はパーキンソン氏
病で長らく不自由な苦しい生活を送っていた。最期に彼女はどんな
言葉を残したかったのだろう。そんなことを考える。

 塔和子とはその詩を通して、そしてその詩を歌う、沢知恵を通して
出会った。
「かかわらなければ」。

塔和子は「詩は生きることそのもの」と言っていた。
沢知恵は歌うことが生きることそのもののような人だ。
 
 私は塔の詩の中で特に「書くこと」という詩が好きだ。

        書くこと
  絞り出されたレモンの知るが
  器の中へ溜っていくように
一枚の紙片の上に
  私の中から絞り出された言葉が書き留められてゆく
  書き留められた生々しい言葉の乱雑さを整理するともう私の中には
  イミテーションの耳飾を付けるほどの気力もない
  なんて残酷なんだ書くってこと
  レモンの絞り滓のようにからっぽになった頭を支えて寝転んでいると
  からっぽの不安の中から
  はやくももの白いレモンの花のように
  もうひとつの意味がそだっている
  絞り出されるための実を結ぶレモンの
  匂ほやかに位置しはじめる
  もうひとつの意味のいぢらしさ
  私はそれが熟するまで
  長い時間を待たなければならない
  この残酷なもうひとつの新しい作業が為しとげられるために
  ああなんてさみしいんだ
  レモンの匂い
  私の中のレモン
  際限もなく意味育ってゆくレモンの
  なんていぢらしいんだ
  書くってこと


  レモンの比喩のみずみずしさ、甘酸っぱさにほれぼれする。
 
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by nokogirisou | 2013-08-29 21:49 | 日々のいろいろ

夏が終わった

  京都、北九州、島根は玉造温泉、東京とあちこち大移動した夏
もとうとう終わろうとしている。
いつもの夏よりもあっという間だった。
 東京から帰ると、新潟はみごとな夕焼けの中だった。
 しみじみ帰ってきた…という思いになった。
 新幹線から眺める風景になんともいえない親しみを感じる。
駅に降り立ったときに、新潟の空気を感じる。
ここにはゆるやかな時間の流れ、人のうごきがある。

日本海と信濃川が間近で、角田と弥彦を仰げる新潟市に愛着を
感じる。ここはやはり水の都だ。

 観光地として、農産物の産地として、宣伝や売り込みは上手
ではないかもしれないけれど、やっぱり新潟のたべものがうまい
と思う。(これは新潟市に限らず、新潟県全体でいえること)
特別な名所はないけれども新潟の夕陽はすばらいいと思う。
散歩にすぐれた道も多い。

 私は旅が大好きだ。移動することが大好きだ。
 けれども夏のおわりに、じぶんの居場所に戻ってしみじみ思う。
 旅は、自分の場所を再確認する行為だ。
 今、ここで、じぶんができることをしよう。
  
 
 
 
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by nokogirisou | 2013-08-24 22:02 |

POP王内田剛さんのお話

 
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 学校図書館教育研究会、第12回研究会に参加してきた。
テーマは「本のチカラ −POP王が語る本の魅力–」で以前
から、お会いしてみたいと思っていた三省堂書店の内田剛
さんが講師だった。

 学校図書館で生徒にPOPを書かせることが多くなり、何か
コツがあるのだろうか、どうやったら魅力なPOPを書けるのだ
ろうかと思って参加した。
 本のPOPは本の長所を紹介し、短所を補うものだという。
本にも個性があり、POPにも個性があってよいのだそうだ。
また内田さんはPOPを書くために、最低三回は本を読む。
 1 まずは付箋をつけながら読む
 2 付箋をはがしながら、メモって読む
 3 POPを書きながら読む

 お話は、書き方・描き方技術にとどまらず、むしろ、書店人と
しての半生、POP王と呼ばれるまで、「本屋大賞」というお祭り
の誕生エピソードなどが熱く語られ、そのお話が印象深かった。
書店は奥が深い。
 書店の裏側は厳しい。苦しい出版事情、電子書籍とのせめ
ぎ合い、なんとかして活字文化を守りたくてがんばるリアル書店
の奮闘ぶりも語られた。

 内田さんの言葉で特に印象に残っているものをあげておく。 

「書店員と書店人の違いは、哲学をもっているか、持っていないか
の違いである。」
「仕事をしていると流される。哲学を持っていると流され方が違う」
「読書は人生、それ以上だ」
「若者が、本を探す喜び、選ぶ喜びを知らないまま成長するのは
 残念だ」
 
内田さんが書店で働き続ける上で、転機になった本が紹介された。

『だれが「本」を殺すのか』佐野眞一
『がんと向き合って』上野創
『傷だらけの店長~それでもやらねばならない』伊達雅彦
 
 転記になった本を語れるということが魅力的だ。

 会場は、文京学院大学女子中学校高等学校。
こちらの学校図書館、女子教育に力を入れているのだなという
ことをひしひしと感じた。全体に、明るく親しみやすい雰囲気で、
コーナーの作り方が素敵だった。

 写真は中山美由紀さんより。
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by nokogirisou | 2013-08-24 08:19 | 本と図書館

秋田喜代美先生の記念講演「子どもと本をつなぐ読書活動の充実 

 8月20日、第49回新潟県学校図書館研究大会阿賀野大会に参加した。
旧笹神村の阿賀野市ふれあい会館が会場であった。
 記念講演の講師は東京大学大学院教授の秋田喜代美先生である。
演題は「子どもと本をつなぐ読書活動の充実」。
 大変盛りだくさん、刺激に満ちた内容だった。

柱は3本。

 1 「子どもの読書と人材育成に関する研究」をはじめとする、内外の
   様々な読書活動・読解力育成関係の調査報告の分析


  調査結果から、顕著にわかったのは、中学時代までに「忘れられない
  本」にであった人ほど、その後の読書量、読書時間が多いということだ。
  これは、大人が子どもに本を手渡すことが「忘れられない本」との出会い
  につながり、その後の子どもたちの読書習慣を形成しうることを示唆して
  いる。

  また驚くべきことに、学校図書館から本を借りない中高生が7~8割いる。
  学校図書館は中高生にとって魅力的な本がないのだろうか。今後の
  学校図書館活性化の課題が浮き彫りになった。
 
  学校全体で読書指導に取り組み、学級文庫が充実した環境にある中高
  生が読書ほど、読書に熱心にとりくんでいるという。


 2 秋田先生が関わられた小中学校の読書指導実践の紹介

   キーワードは「孤読み」から「いっしょ読み」
   共読のための「ペア読書」「味見読書」「リテラチャーサークル」「付箋をつか
   った読書」など様々な試みが紹介された。
   ビブリオバトルや読書甲子園などの読書を核にした高校生の活動にも可能
   性を感じた。
   また、読むだけでなく本を選ぶ体験が重要であるということにヒントをもらった。


 3 秋田先生が大切にされていることば

   大村はまのことば
   イエーツの詩の一節
   福原義春(資生堂社長)のことば
   などがタイミングよく紹介された。
 
 学校図書館が子どもたちの「安心居場所」であり、「文化的価値ある対象に
 子どもたちが没頭できる場所」であるべきだというお話はもっともなのだが
 この実現には、やはり「人」が必要だ。
 学校図書館の活性化、読書教育の充実には、人が重要な鍵を果たしている。
 
 
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by nokogirisou | 2013-08-21 04:04 | 本と図書館

宮崎駿監督『風立ちぬ』

  ほとんど予備知識なく、標記の作品を見た。
知っていたのは、主人公の声を庵野秀明が担当すること、
主題歌が荒井由美の「ひこうき雲」だということくらいだろうか。
それがよかったのかもしれない。
 同じくこの映画を観た友人は、『風立ちぬ』と実在の堀越二郎
の物語を無理やりくっつけた感じがしたと言っていたが、私は
「無理やり」感を感じなかった。

 終わった瞬間に、理由のわからない涙がこぼれて、館内が
明るくなるのが恥ずかしかった。
 私がこの映画で強く感じたのは、「時代」だ。大正の終わりから
昭和にかけての、どうにもならない時代。外国に追いつこうと
右上がりを目指す勢いと、一方で貧困や格差がはびこる世の中。
だからこそ、純粋なものも多数存在した時代。そこにしだいに戦争
の色も入り込んでくる。今の自由で、勝手で、ある意味便利で
能天気今とは、違う、息苦しさを感じた。
 
 この映画のキーワードは「夢」だと思った。繰り返し夢が出てくる。
二郎はよく夢を見る。
 そして、夢がこの物語を推進する。この作品は10年をひとつの
単位として動いているので、時間の流れが速く感じられる。その
不可解さを夢が上手に解消してくれている。
そうしてもう一つの意味の「夢」
「飛行機は戦争の道具でも商売の手立てでもないのだ。飛行機は
美しい夢だ。」

 もう一つ気になったこと。この作品では「たばこ」だ。たばこが重要
な役割を果たすということだ。
ちょっと昔の映画には本当にたばこがよく出てきた。主人公が集中
する時たばこを必要とするし、人と人をつなぐとき小道具にもなる。
たばこが、許され、信頼されている、そういう時代だったのだ。
 
 二郎という人物を眺めながら、私は『舟を編む』の馬締を思い出した。
ひたすらに飛行機の設計に打ち込む姿と、一方で純粋に恋をし
妻を愛する姿。
「力を尽くして生きろ、持ち時間は10年だ」という二郎の夢の中に出て
くる飛行機製作者カプローニの言葉にも私は敏感に反応してしまう。
 何かを成し遂げるには10年はあまりに短い。けれどもその10年を
必至に力を尽くして生きなければ、何も変わらないのだ。
 そして、その10年がどんなものであっても、まだ生き続けなければ
ならない。

 感傷的になりすぎだよ、この映画に…という人もいた。
でもやはり、私はこの映画に泣けてしまうのだ。 
 
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by nokogirisou | 2013-08-13 21:16 | 映画

学校図書館問題研究会島根大会参加

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初めて島根県にやってきた。静かな土地だ。神様パワーがあちこちに宿っているらしい。

学図研島根大会は、熱気にあふれていた。もうあれから一年経ったのかと不思議な気持ちになる。

年に一度お会いする方、初めてお会いする方、離れているのに研修の度に何度もお会いする方。とにかく、いろいろな方と声掛け合い、話しあい、親しく出来るのが特徴だ。ほかのどんな研修会にもない当事者感覚を味わえる。

印象的だったことを述べる。
実践発表のプレゼンはすばらしかった。中身は当然示唆にあふれていたし、見事な実践だったが、プレゼンそのものが、感動的だった。少しも飽きさせず、こちらに、他人事感を抱かせない。積極的に考えさせる。勉強になった。

ナイターのアニマシオンの研修では、『読書へのアニマシオン75の作戦』に忠実にやることに縛られてはいけないことを学んだ。本質は見失わず、目の前の生徒に合わせ、読ませたい本に合わせて作戦をアレンジしてもよいということだった。

分科会の蔵書構築を考える!では、中村百合子さんの研究者サイドのレポートに刺激をうけた。もっとちゃんと勉強したいと強く思った。
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by nokogirisou | 2013-08-05 18:04 | 本と図書館