『ぼくのお姉さん』
おくればせながら『ぼくのお姉さん』(丘修三著 偕成文庫)を読んだ。
これはジャンルとしては児童文学に分類されてしまっているけれど、よく できた短編集だと私は思う。 「ぼくのお姉さん」ではダウン症の姉を弟の正一の目がなかなか鋭く 捉えている。17歳の姉ひろが、みんなに早く帰ってこいという。家族は 半信半疑で夕方集まってくるのだが、ひろは母にご飯を作ってはだめ と泣く。レストランに行きたいというのだ。わがままかと思いきや、福祉作業所 で勤め始め、初めての給料で家族にごちそうしたいという、ひろの心遣い だった。障害者を主人公にする小説はむずかしい。これは短いのに、きれ い事だけで描いていないところがいい。じんと腹に残る物語だった。なんと いっても言葉によるコミュ二ヶーションを取り合うことのむずかしさがとても リアルだ。そして家族ひとりひとりの存在感がとてもいい。チビ・デブ・ブス のお姉ちゃんをありのまま、そのまま受け入れようとする正一の弟としての 気持ちが自然だ。 丘さんは、実際に障害児教育に関わって来られた方で、初めて養護 学校に勤めて、脳性麻痺の子どもたちと接したときは、「なんて汚い、 臭い、醜い子どもたちだ」と思ったそうだ。けれども毎日毎日接している中で、 子どもたちに対する気持ちが変わっていく。 思想、理念というものは先にあるのではなく、共存することによって作られて いくのだと実感したそうだ。 それはなんとなく私にもわかる。 いいことも悪いことも、共に生きている中で体験して考えが変わっていく。 互いに対する理解も深まって行くのだろうと思う。 ペンネームはこの世の中「おかしいぞう」の響きに似ているからとったとか。 ■
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by nokogirisou
| 2004-10-06 06:17
| 本と図書館
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