カテゴリ:本と図書館( 89 )

新しい学習指導要領になって、一番の変化が求められているのは、国語だよ、と言われている。
本当だろうか。さてどう変化すればよいのか。
『高校の国語授業はこう変わる』(大滝一登、髙木展郎編著 三省堂)を読み進めながら、考えたい。

これまでの高等学校の国語教育では、たしかに教材の正確な読み取りが中心に行われてきた。その方法は訓詁注釈的で、学年や学校で共通の方法と考査で管理されてきた。知識とスキルの定着が何よりも求められた。なかなか教師個人で好きなように 授業ができなかったのが現状だ。また、教材ありきで、定番教材があり、教材を教えることが、国語の授業だった。
これからは、資質、能力ベースの単元構想が必須になり、分野を越えて題材を組み合わせたり、同一分野で複数の題材を組み合わせて授業していくことが求められる。授業のデザインを授業者が主体的に行わねばならないし、参加すり生徒たちが主体的、対話的に学べ授業にしなければならない。これは結構ハードルが高い。
評価もこれまでのような設問形式の考査だけでは行われなくなるだろう。レポートなどの成果物、発表などのパフォーマンスの評価が必要になる。そこでまた、客観的な評価をどうするべきかという議論が起きることがだろう。




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by nokogirisou | 2018-09-17 20:02 | 本と図書館

 
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 司書のKさんがfacebookで紹介していたので、手に取った。
これまた一気に読んだ。小説を一気読みは久しぶりだ。三浦
しをんという作家の筆力もまたなかなかだ。読ませる。
 この本は読みながら、思わず声を出して笑ってしまう。人前
では読めない。
 私は、中島梓の闘病記を読んでいるときに初めて「やおい」
という言葉を知った。それまで知らなかった物知らずである。
中島梓が「もっとやおい書きたい」と書いていたので、思わず
調べて、おどいた言葉である。「腐女子」という言葉もその時
知った。その学習がとても生きる読書となった。
 主人公川田幸代は腐女子である。これがなかなかかっこいい。
彼女はオタクなのだ。オタクの生態に俄然興味がわいた。オタク
の世界と社史編纂室が関係が絶妙である。そして幸代と恋人の
洋平との関係もなかなかいい。
 はじめは、まったり、ゆるゆる、情けない職場である星間商事
株式会社社史編纂室が、なんと裏社史を書くために一致団結し、
緊張感あふれて楽しい職場になっていくのである。(しかしこんな
ふうに書いてしまっては身も蓋もないか。)
 この小説のおもしろさは、星間商事の過去の秘密が明らかになっ
ていくことでもあるが、それ以上に登場人物ひとりひとりがとても
リアルに存在を持って書かれているところが魅力だ。まるで彼らが
実在して本当に動いているかのように思われる書き方だ。また幸代の
心のうちもなんだけ手にとるようにわかる。そして登場人物みなが、
この小説の中で、ある種の変化を遂げていくのである。
 読後感は爽快。読書は楽しい。
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by nokogirisou | 2011-09-10 09:09 | 本と図書館

 
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 すでに話題になっている本だが、私も書評を読んで、この本に吸い
寄せられた。
手にとって一気に読む。26歳の大学院生の運命と表現力に圧倒させら
れてしまった。福島から上智大学のフランス語科に行き、そこでビルマ
(ミャンマー)の難民問題に出会って、軍事政権と闘い、難民を救うた
めに多忙、過激な日々を送った著者が、どういう具合か自己免疫疾患の
難病にかかって医療難民となる。(ビルマの難民問題にこんな風に関わ
っている人たちがいるということを知ったこともかなりショックだった
のだが)病気というのはまったく理不尽なものである。有能で活動的な
若い女子が病気になる。彼女の生活と夢はすべてストップする。その状
況での困ったぶりが、本当になまなましく、他人事でなくリアルに描
かれる。しかしその目が客観的なので、読者はある意味救われる。見方
が分析的で、書き方がうまくて読ませる。彼女個人に対する同情や哀れ
みでなく、社会問題として「こまった状況」(いつか自分のなりうる困
った状況)をどう打開していったらよいのか真剣に考えさせられる。困
ってる人は彼女だけではないのだ。
この本を読んで痛いなと思ったのは、信頼関係にあったクマ先生との
間に溝ができたところと、これまで懸命に支えてくれた友達が、支える
ことが負担になっていると告げにくるところだ。人はとことん甘えること、
赦されることはないのだろうかと思ってしまう。
 健康でゆとりのあるときは、気遣いも気配りも自立もできる。けれども
本当に困ってしまって人に頼るしかない、わがまま言うしかないときに、
そんな余裕はない。相手から切られてしまうときのショックはいかばかり
かと思う。
他人に全面的に頼られるときの重さもわかる。自分自身が疲れてしまう
のもわかる。でもそこで最後のぎりぎりのところで、人を切りたくない。
そこまで自分を追い詰めたくないものだと思う。
 救いとなったのは、最後の方の淡い恋愛談。難病の彼の誠心誠意のふる
まいにほっとする。やはり愛が必要なんだ。人が生きていくには。
 著者がこれから病気とうまくつきあいながら、絶望せずに、発言を続け
ていくことを祈っている。
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by nokogirisou | 2011-09-08 21:26 | 本と図書館

アニマシオン勉強会

 昨日は今日は津田沼で開かれた第125回拡大アニマシオン勉強会
に参加してきた。内容盛りだくさんで1日があっという間だった。アニマ
シオンを通して出会った懐かしい方々に再会し交流できたこともうれしか
った。1998年にアニマシオンに出会ってすでに13年。紆余曲折あったが
勉強し続けてきてよかったと思った。
 アニマシオンとは、子どもたちにまるごと一冊の本をよめるように励ま
し、導くメソッドだ。これまで読書を動機付けたり、本を紹介したりする
活動や読み聞かせはさかんに行われてきたが、アニマシオンは読書そのも
のを自分でできるように、「作戦」を用いて集団で行う読書の「おけいこ」
である。作戦には「まとめる読み方」ができるようにするもの、「広げる
読み方」ができるようにするものがある。アニマシオンはこれまで無意識
に本人まかせてきた本の読み方を、明確に意識的に学べるようにした。
 
 私はこれまで、学校や公共図書館でアニマシオンをやるからには、アニ
マシオンで、子どもたちにどういう力をつけるのか、どうやったら効果的
なアニマシオンになるか、よりよいスキルを身につけるにはどうしたらよ
いかに腐心してきた。これらは実践の上で確かに必要なことだ。しかし
それだけでなく、大人が子どもたちに「本を読む文化」や「読書の価値」
を根気強く伝えていくことを忘れてはならないと思った。

 「本なんか読まなくても生きていける」という大人も多い。
本を読まなくてもたしかに生理的には生きていける。しかし知的には死ん
でいることになるのだという黒木秀子さんの主張は説得力があった。

 今回参加したことによる収穫のひとつは、すてきな本に出会えたことだ。
アニマシオンにかかわっていなければ決して読まないだろうと思われる
本に、深く出会えたことは私の財産になっている。
 
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by nokogirisou | 2011-08-14 08:10 | 本と図書館

学校図書館の抱える問題

 どうして学校図書館が学びの中心にならないのか。
大学の先生たちが、もっと高校生に読書してほしい、高校で本を読める
ようにしてほしい、レポートを書く力をつけさせてほしい、と言っているの
に公立高校の現場はあまり応えていないように思う。


 まず、現場の先生方が図書館に関心がない。図書館や図書を授業に
使わないことが問題だと思う。しかし高校教員が効率のよい、一斉授業、
教え込みや問題演習に追われるのは、現在の大学入試制度の影響であ
る。センター試験で高得点をとるには、時間をかけて図書館で調べさせた
り、レポートを書かせたりする余裕がないのだろう。だが、私は反対だ。
自分で調べ、学ぶという体験を高校時代にぜひ体験すべきだと考えている。
授業で図書館を使えば、図書館はもっと変わっていくはずだ。


 現在、司書をおかず、図書整理や購入は外部委託にまかせる学校が増え
てきているという。人件費を安くできてよいときく。しかしこれはまったく逆行
していると思う。司書の仕事はそういった事務仕事だけでないことをもっと
お上は知るべきだ。うちの司書は、来館する生徒のようすや貸し出しの傾
向をよく観察して、本を選んでいるし、生徒とのコミュニケーションから、
館内の配置や、展示コーナーを考えている。これは、専任司書でなけれ
ばなかなか出来ない仕事だ。授業とクラス担任の仕事を抱えている現場
教員は、司書教諭であっても司書のように図書館運営には関われない。
だから、司書を減らすとか、司書を採用しないなどというばかげた政策は
やめてほしい。
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by nokogirisou | 2011-07-18 10:58 | 本と図書館

 
 
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七夕だが、あいにくの雨。
 Kさんのおすすめで『手紙屋~蛍雪編』を手に取った。
 なんと、就職編とつながっているのだった。
 こういう展開だったとは…。著者は、同時に二冊の『手紙屋』を
書いたといっていた。

 主人公の高校生、和花が高校2年生であるところがポイントだ。
高校2年でこんなに進路に迷い、手紙屋と意見交換できるなんて
たいした女の子ではないか。2年生でなかなか受験勉強をリアルに
とらえられない。なんとなく、やらなくては、将来を考えなくてはと
考えるだろうけれど。
しかし、これが高校3年だったら、間に合わないだろうと余計な心配
をする。手紙屋と出会ったのがこのタイミングでよかったと勝手に
胸をなでおろす。
 手紙屋さんのメッセージは著者のメッセージでもあるのだろうけれ
ど、なかなか筋がとおっている。ちょっと理屈っぽいけれどもまったく
最もなことばかりでもある。
 ちょっと最後が予定調和なのと、日常生活の描写の書き込みが
足りないのは残念だが、この本の性格とすれば仕方ないだろう。
 
 
 
 
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by nokogirisou | 2011-07-08 05:41 | 本と図書館

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 これは自己啓発本の一種なのだろう。
「僕の就職活動を支えた10通の手紙」という副題が
ある。
 やや抽象的な職業論、仕事論、人生論的な部分も
あるが、それでもこの本を最後まで読んでしまうのは
いくつかの仕掛けのせいだ。
 私は、主人公諒太が、手紙屋を知ることになる「書楽」
という喫茶店や、「手紙屋」の存在に魅力を感じる。
「書楽」は顧客の誕生日に、特別な玉座のある書斎を
利用するサービスをプレゼントしてくれる。本も手紙も
喫茶店も現代社会では、斜陽なものたちだ。だからこそ
とてもいとおしく、リアリティを感じる。
 こんな喫茶店が現実にあったらどんなにステキだろう。
諒太は、その書斎で「手紙屋」と出会い、10通の手紙を
交換し始める。諒太はちょうど就職活動を開始したばかり
の大学4年生だ。
 手紙屋と文通しならが、諒太は仕事をするとはどういう
ことか、ビジネスとは何かを学んでいくのだが、そういう
ところは、やや予定調和的で、私はあまりおもしろくなかった。
こんな説教臭い手紙をありがたがって読む諒太がとても
レトロな青年に思えた。
 手紙を中心にすすめれらる小説なので、諒太の大学生活
や就職活動の描写がほとんどなく、説明的な文章が多いの
が残念だが、わかりやすい小説でもある。しかも手紙屋が何
者か、やはりそれが気になって先へ先へと読んでしまう。

 なるほど。こういう小説もあるのだなあ。けっこう若い人たち
に好評らしい。
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by nokogirisou | 2011-06-13 19:29 | 本と図書館

 仕事がら、小説を読む機会が増えたのはうれしい。
 今日は、読書家の少女に勧められて一冊を読む。
 少女時代の回想を交えながら、自分の静かな恋人との
時間を失うことを恐れる38歳の画家の語りだ。
 たんたんと描かれているのだが、彼女の生活がつぶさ
にイメージできる。結婚はできないが完璧な恋人との時間
をよくばらず、大切にしてきた。ところが、だんだん待ってい
るだけの自分、恋人のいない時間をたえられなくなっている
自分に気づく。
 彼女は、別れるしかないと思うのだが、病を得て、やはり
別れられない。かなわないであろう夢を二人で語り続ける。
 今は幸せ、今は楽しいが将来に対するぼんやりとした不安
と相手には家族と恋人という二重の生活があるという不満。
傷つかないように用心深くしていたにもかかわらず、しだいに
傷ついていく感じがリアルだ。
 これを17歳の少女が私に勧めてくれたことをとても不思議
な感触を持ってうけとめる。
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by nokogirisou | 2011-06-10 06:16 | 本と図書館

 小川洋子の初期の長編『シュガータイム』と佐藤多佳子の初期の
短編連作の『サマータイム』を連続して読んだ。こうやって小説を
連続して読めるのは、やはり図書館係職員になったおかげだろう。
やはり図書館に常駐していると、本が身近であり、本の情報に敏感
でいられる。本当にありがたいことだ。
 『シュガータイム』は大学4年の主人公の切なく、奇妙な青春が描か
れる。私の知っている大学時代ととても近く、とても恋しく感じられて
ならない。彼女を悩ませているのが、食べ物に対する執着と過剰な
食欲だ。だからと言って彼女は病的ではなく、それによって不健康
になっているわけではない。しかし彼女は、いくつかの心配ごとを
抱え、それでもきちんと日常を送っている。美しい食料品にあふれる
サンシャイン・マーケットと親友と小さい弟に支えられて。心地よい、
懐かしい青春小説なのに、小川洋子の表現は時として、なまなまし
く私たち読者を突き放す。それが心地よいことがある。
 『サマータイム』はピアノが出てくるので惹かれる。読んだあと、「サマー
タイム」が聞きたくなる。小学生の二人の男の子、進と広一の出会いから
物語は始まる。これもまた不思議な三角関係がある。進の姉の佳奈と
広一と進の微妙な関係。あまり詳しい説明がないところが新鮮で詩的で
想像をかきたててよい。森絵都とどこか似ている。
 二冊連続で読んだことで何かつながるような、新しい世界に出会った
ような、さわやかな思いに浸ることができた。
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by nokogirisou | 2011-05-03 00:12 | 本と図書館

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  一気に読んだ。
 ネットで始まり、メールで闘う恋愛小説である。
 『フェアリーゲーム』というライトノベルのシリーズの感想をメール
で交換しあううちに、つながり合う伸とひとみの姿がリアルに描かれる。
メール交換を重ねるうちに、二人は自然と惹かれ合う。
しかも、彼女の方は中途失聴者であった。
 ここまでならよくあるお話である。障碍を持つ彼女と出会い、本物の
恋人になっていく物語だ。
 私がもっとも気になり興味深く思ったところは、互いにわかりあえない
ところをどう、受けとめていくかという部分だ。きれいごとで済まさないと
ころが興味深かった。
 たとえば、伸は、うまく進まない恋を会社の同僚のミサコに相談する。
すると彼女は身障者のことをこう言ってのける。
「何かねー。わざと空気読まない人多い感じがする。普通なら流すとこ
ろ、わざわざ突っかかってわざとけんかになるようなことをするよ。
(中略)でもね、それって試しているんだって。そんなイヤミな言い方
してもその人が自分のこと嫌いにならないかどうか。」
私は、はらはらしてしまった。こんなこと本で書いていいのだろうかと。
しかし、実生活でこのような体験を私もしたことがあった。言葉尻をとら
えられて、人権意識の低さを指摘されて傷ついたことがある。けれども
それをきっかけにコミュニケーションが進み、互いに近づけたという経験
を持つ。だから、妙にこのミサコの発言に説得力を感じた。
 
 こうして、二人はとりあえず目の前の壁を乗り越えて、恋人になって
いきそうなところで物語は終わる。

 有川が聴覚障害者のことをとてもよく勉強したことも、男女の心の機微
をうまく書ける作家であることもよくわかった。

 おもしろかったが、何か物足りない、何か不満だとしたら、語り手の視点
があいまいなところだろうか。伸の立場から書いているところもあればひとみ
の視点で書かれているところ。そして神の視点で書かれているところが微妙に
混じっているところが気になった。そして、やや人間像がステレオタイプのところ
が気になる。(えらそうなこと書いてすみません)
 周辺の人物が描かれたりするともっと厚みが出てくるのだろうか。
 しかし有川の挑戦のようなこの小説に好感を持つことができた。
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by nokogirisou | 2011-04-30 09:44 | 本と図書館

感じたこと・考えたことを忘れないために。